おでん食堂
議政府で一番早く「部隊料理」を作って売ったのが、この「おでん食堂」だ。広さ1.5坪の店にテーブルを5台置いて始めたおでん食堂の当初のメニューは、さつま揚げとうどんだったが、1962年に現在のプデチゲの元になる「プデいため」を出した。在韓米軍部隊向けの肉をいため、150ウォンで酒のつまみとして出していた「プデいため」は、はじめアルミ鍋で作っていたが、鍋が焦げ付きやすかったので、後に取っ手を外した釜のふたを使うようになったそうだ。現在、議政府プデチゲ通りにある店がプデチゲを作る時に釜のふたを使うのも、このためだという。そして、1988年から「プデいため」にスープとキムチを入れ、ご飯と一緒に食事として食べられるプデチゲとしてメニューにした。おでん食堂の歴史は、ホ・ギスクさんから3代続いている。スープが濃い割に辛すぎも、しょっぱすぎもしない絶妙な味の理由は、おでん食堂秘伝のスープにある。店は元祖プデチゲを一口食べようと、はるばる遠くからやって来る客で足の踏み場もないほどなので、週末や食事時の混雑はご理解いただきたい。
*アクセス: 韓国鉄道公社・議政府(의정부)駅1番出口から佳陵駅方面へまっすぐ行き、議政府警察署前の交差点で右折、3ブロック直進。議政府プデチゲ通り入口
*住所: 京畿道議政府市議政府1洞220-58
*時間: 8時30分-22時
*定休日: 年中無休
*Tel: 82-31-842-0423
松炭プデチゲ
松炭プデチゲの由来は、米大統領が訪韓し、帰国する時に利用した烏山飛行場にある。ジョンソン大統領が松炭(現・京畿道平沢市)の在韓米軍烏山基地を訪れた際、大統領をもてなそうとした食堂のおかみさんがハムとコチュジャン(唐辛子みそ)を入れ、チゲを作った。その味にジョンソン大統領が感激したことから、この料理はジョンソン・タン(タン=スープ)と呼ばれるようになったそうだ。今でも「プデチゲ」ではなく「ジョンソン・タン」とメニューに書いている店もある。ソウル・梨泰院のパダ食堂がその代表だ。ジョンソン・タンの由来を知らない人にとっては、興味をそそられる名前だろう。
今も在韓米軍部隊が多い松炭地域には古いプデチゲ屋が多いが、「崔(チェ)の店」と「金(キム)の店」は松炭プデチゲを代表するツートップだ。今や、「議政府プデチゲ」も「松炭プデチゲ」も、地元の名物という特性を通り越え、一種のブランドになった。全国各地でこうした地域の名前を付けた店が目に付く。「ソウル市内から地下鉄1号線の天安行き急行列車に乗り、40分かかる平沢(旧・松炭)は遠すぎる」という方には、その味をありのままに再現しているソウル・明洞の「松炭プデチゲ」をおすすめしよう。プデチゲの真ん中で溶けているチーズが特徴の松炭プデチゲは、牛骨スープでピリ辛味。「特殊部隊(プデ)チゲ」を注文すると、白玉もちとペパロニ・ハムをプラスしてくれる。ご飯はおかわり自由なので、おなかいっぱい食べられる。辛いのが苦手な方は、唐辛子抜きでの注文もOK。
*アクセス: 地下鉄・明洞(명동)駅6番出口からまっすぐ200メートル進み、zaraのショップを通り過ぎてから右折すると、ベーシック・ハウスの道にある。
*住所: ソウル市中区明洞2街4-2
*時間: 10時-23時
*定休日: 年中無休
*Tel: 82-2-753-3330
アマセン
「元祖プデチゲはもう食べた」という方は、新しい味のプデチゲをどうぞ。「韓国人が大好きなプデチゲをどうアレンジすれば新しい味になるだろうか」と考えていた「アマセン」のチョン・ミソン代表は、豚骨スープに手打ちうどんを入れ、「日本風」にしてみた。まず、「プデチゲはピリ辛」という認識を覆そうというものだ。ニンニクと唐辛子粉がメーンのスープではなく、豚骨スープに野菜を入れ、さっぱりと淡泊な味にし、白いスープにいろいろなハムやさつま揚げを入れ、「アマセン・プデチゲ」を作り上げた。普通のプデチゲだと思って注文した人は、唐辛子粉が全く入っていないこのチゲにビックリ。そこで、ピリ辛が大好きな方のためには、唐辛子粉を入れた「ちゃんこプデチゲ」もある。アマセンのプデチゲは、スープが違うだけではない。ここを「特別な店」にしているのは、うどんだ。店の手打ちうどんをゆで、ラーメンのように油で一度揚げたものが、プデチゲで欠かせないインスタントラーメンの「めん」代わりになる。うどんの油がプデチゲにコクを与えてくれるだけでなく、揚げるからうどんのモチモチとした食感が長続きし、のどごしがいい。店はあまり広くないので、昼時・夕食時はできるだけ避けた方がいい。
*アクセス:地下鉄・建大入口(건대입구)駅2番出口から子供大公園方面へ5分まっすぐ行き、showのショップを左に入った道にある。
*住所: ソウル市広津区華陽洞3-33
*時間: 11時-22時
*Tel: 82-2-425-0043
文_チョン・ウンギョン 写真_ソン・ギョンシク , チョン・イクファン