幕が降りたステージに向けられた拍手は鳴りやまなかった。日本から来た女性客たちは立ち上がり、「ユンホ! ユンホ!」と叫び続けていた。この日、ミュージカル『宮』(キム・ジェソン演出)に出演した活動休止中の人気グループ・東方神起のユンホを呼ぶ声だ。声はどんどん大きくなっていったが、5分たってもユンホは姿を見せなかった。海を渡ってきた観客たちは残念そうな表情だったが、最後にまた拍手を送り、笑顔で席を立った。
9日夜にソウル市内の国立中央博物観劇場「竜」で上演された『宮』はほかとは違っていた。日本人客の団体鑑賞のみで行われたからだ。全800席は40-50代の日本人女性でいっぱいになり、ステージの左右には日本語字幕が流された。出演者たちも「分かりますか?」などの日本語を使っていた。
ミュージカル『宮』の原作は2002年から始まった漫画。06年にはテレビドラマ化され、日本でも公開された。「韓国が立憲君主国だったら」という設定で、厳格な宮廷生活に嫌気が差した皇太子イ・シン(ユンホ)が主人公。皇太子の学校生活、プリンセスとの出会いと結婚、王の座をめぐる争いなどでストーリーが展開していく。
観客の視線は「国民のアイドル、皇太子殿下」役のユンホに集中した。ユンホが登場すると歓呼が巻き起こり、スーツのボタンを一つ外すだけで「ふぅーっ!」とため息が漏れた。ミュージカル『宮』鑑賞が組み込まれている2泊3日のパッケージツアーで来たというナカモト・タミコさん(長崎県)は、「ユンホは歌も演技もすごく上手。最終公演日も見たいのに、チケットが手に入らない」と言った。年齢を聞くと、「聞かないで。おばさんですよ」と言われた。また、ヒラマト・マサコさんは「韓国アイドルは完ぺきで、手が届かないような存在感やカリスマ性がある」と語った。
出演者たちのやり取りは漫画的で荒さがあった。ユンホの演技は少し硬かったが、歌とダンスは安定していた。発光ダイオード(LED)映像は機能的な面もあったが、美しさの完成度にはやや欠けていた。
それでも、日本人客の満足度は高いようだった。日本で売り出されたミュージカル『宮』パッケージツアーは発売当日に完売した。公演制作会社は、日本人客のため「団体鑑賞」をさらに4回ほど行う予定だ。また、東方神起メンバーのジュンスが10月7日から10日まで、ソウル・オリンピック公園体操競技場で行う「キム・ジュンス ミュージカルコンサート」も日本の旅行代理店を通じ販売されており、人気を呼んでいる。