シェフたちが「ソース」として高く評価
「素材そのものの味わいを生かす」
全羅南道潭陽郡昌平面では一年中、たくさんのかめの中で韓国伝統のしょう油が熟成されている。この地は韓国で唯一のしょう油作り名人、キ・スンドさん(農林水産食品部指定伝統食品名人35号)が、約600個のかめで韓国伝統のしょう油を作っている場所だ。昌平高氏本家14代目の嫁として、360年前(推定)の「種しょう油」を守ってきたキさんは、「韓国伝統のしょう油は醸造しょう油では出すことのできない深い味わいがあり、後味がさっぱりしている」と話す。キさんはあらゆる料理の味付けにしょう油を使うという。キムチにも、塩辛の代わりにしょう油を使うほどだ。キさんのしょう油キムチは、薄味でさっぱりしているのが特徴だ。韓国伝統しょう油は陰暦11月に麹を作り、正月に洗い、竹塩を加え、45-50日間熟成させる。そして4月末ごろ、味噌としょう油に分ける作業を行う。
100年以上熟成させたしょう油は、「種しょう油」に新しく作ったしょう油を加えながら守り続けてきたもの。元々、しょう油は1年たつと40%程度が蒸発してしまう。
長い年月が生み出す味の素晴らしさを実感させる伝統しょう油は、最近、スローフードが脚光を浴びていることもあり、改めて注目されるようになった。ほとんどの韓国人は、タレや汁物の味付けにしょう油を使うが、シェフや専門家たちは、伝統しょう油独特の深みのある味わいを、「ソース」として高く評価している。
専門家たちが評価する伝統しょう油の深い味わいは、大豆によるものだ。大豆のアミノ酸が豊かな味わいを引き出し、材料が持つそれぞれの味や香りを強調する。甘い料理に使えば甘さが強調され、辛い料理に使うと味がまろやかになる。
今年、「世界のベスト・レストラン50」で1位に選ばれたデンマークの「ノマ」でシェフをしていたキム・ジンレさん(現在は光化門にある韓国料理店「コンドゥ」のシェフ)は、「しっかりした工程で作られた伝統しょう油は臭みがまったくない。人工の調味料を使わなくても甘く豊かな味わいを出すことができるため、よく使っている」と話す。
韓国醤類技術研究会の会長を務めるシン・ドンファ全北大学名誉教授は、「日本のキッコーマンしょう油の売り上げは5兆ウォン(約3600億円)に及ぶ。日本のしょう油が占める世界市場に食い込むためにも、基本的なソースとして使える韓国のしょう油を世界に広めるべき」と話した。
■伝統しょう油の調理法
-スープにしょう油を入れるときは、料理がほぼ完成したころに加え、一煮立ちしてから食べる。
-ナムルの味付けに使うときは、あらかじめ薬味しょう油(伝統しょう油、塩、ごま油など)を作ってから、野菜をゆでて和える。伝統しょう油は入れ過ぎるとベタベタするため、塩を使って汁気を少なくするのがポイント(センピョ料理教室「ジミウォン」のイ・ホンラン院長)。
-韓国風味噌汁を作るときは、最後に伝統しょう油を少々加えると、味がまろやかになる。味と香りを生かす程度に入れること(キ・スンドさん)。
-肉の味付けをするときは、醸造しょう油ではなく伝統しょう油を使うと、砂糖を加えなくても甘味を出すことができる。
-伝統しょう油で作ったソースは甘味があるため、どんな料理にも使うことができる。
作り方は、伝統しょう油と水を1対1の割合で加えた後、ナツメや甘草、黒豆を加え、弱火で量が30%程度少なくなるまで煮込む(韓国料理店「コンドゥ」のシェフ、キム・ジンレさん)