旧暦の8月15日、今年は9月22日が韓国最大の年中行事「秋夕(チュソク=中秋節)だ。この日、各家庭で行われる最も重要なしきたりに「祭祀(さいし)」がある。最近はかなり簡素な形式で行われたり、省略してしまう家も多いが、先祖を祭る祭祀は韓国で長い間、各家庭はもちろん、国の重要行事として位置付けられてきた。
特に、儒教国だった朝鮮時代(1392-1910年)は、建国初期から吉礼・嘉礼・賓礼・軍礼・凶礼の「五礼」があらためて整備されてきた。こうした国家行事としての祭祀は、厳格な規律に基づいて行われたが、祭祀に使われる「祭器」の製作もまた同様だった。本来、祭器と共に儀礼で使用される道具や器などは金属で作られるのが原則だったというが、朝鮮時代初期には金属が不足し、陶磁器製の祭器が使われた。
最近でも、家庭できちんとした祭器を新調するにはかなりの費用がかかる。金銭的な負担があるとしても、先祖を祭るのに使う物だから、できれば職人や名工が作った物を選びたいと思うのが人情だ。一般家庭で祭祀に使われる祭器の準備もそれほどの思いが込められているのだから、ましてや昔、国家行事としての祭祀に使われた祭器はなおさらだろう。
湖林博物館新沙分館では現在、15世紀に作られた「粉青沙器祭器」約120点が展示されている。祭祀のお供え物を載せるお膳(ぜん)に、イネやキビといった穀物を入れた専用の箱をはじめ、香炉・杯・ヤカンなど代表的な祭器のほか、日常生活用の器を祭器に利用した酒瓶などもある。王室の威厳や祭器ならではの神聖さが感じられる粉青沙器祭器が鑑賞できるので、朝鮮時代の陶磁器に関心がある方には貴重な機会になるだろう。
「天を地へと招き入れた器 粉青沙器祭器展」
「粉青沙器祭器」をテーマに行われる初の展示会で、その内容と数量は最高水準を誇る。展示が行われる湖林博物館新沙分館は、韓国の伝統芸術をテーマにさまざまな特別展が開催されることで有名だ。「粉青沙器祭器展」と共に、韓国陶磁器の名品が鑑賞できる常設展「陶磁名品展」も見逃せない。博物館が入居している湖林アートセンターは、その建物自体も観光スポットで、1階には落ち着いたムードのカフェもある。
*アクセス: 地下鉄3号線新沙(신사)駅下車1番出口から145・440・4212番バス乗車
*住所: ソウル市江南区島山大路北33道6
*営業日: 11月28日まで
*時間: 10時30分-18時
*定休日: 月曜日
*料金: 8000ウォン
*Tel:82-2-541-3523~5
*ホームページ:www.horimartcenter.org
文_ イ・ヒョンジュ 写真提供_ 湖林博物館新沙分館