素朴な味わいが魅力、慶南・咸陽の名店(上)

品のあるカルビの味、両班料理らしい上品さ:安義カルビ


 「安義元祖カルビ店」を訪ねると、オーナーのキム・デヨンさん(42)が、厨房の横にある作業場で牛カルビの下ごしらえをしていた。「できるだけ脂を取り除かなければなりません。一日中、カルビの脂を取り除く作業をしています。この作業が一番大変ですね」

 咸陽郡安義面は、カルビチム(カルビを甘辛く煮込んだ料理)が有名で、この地域にはカルビチムの専門店が7店もある。この静かな村に、どうしてこんなにたくさん専門店があるのか。「安義は咸陽郡にある面(行政区画の一つ)の一つですが、以前は安義県でした。安義県の中にはコチャンも咸陽もあり、県監(地方官の一つ)も安義に住んでいました。そのせいか、今でも東屋や瓦屋のような古い家がたくさん残っています。両班(高麗・朝鮮時代の上流階級)たちも多く住んでいました。その両班たちが好んで食べていたのが安義カルビでした。また、以前はここで牛市場が開かれていました。当時はカルビタン(カルビのスープ)が有名だったようですが、最近はカルビチムの方が有名になっています」

 この店では、1週間に3、4回、牛4頭分のカルビを仕入れている。まず、カルビを食べやすい大きさに切った後、脂を取り除く作業に取り掛かる。

 カルビを冷水に浸し、血を抜いてから煮る。すると、肉に残っていた血と脂を取り除くことができる。そして水を入れ替え、再び煮る。強火で30分ほど煮て臭みを消した後、各種薬味を加えて弱火で煮込む。「昔と同じやり方で作っています。少しやぼったいかもしれませんが…」

 キム・デヨンさんの言葉のように、安義カルビチムは洗練された料理ではない。しかし、昔ながらの味わいをそのまま残している。骨についた肉にかぶりつき、カルビならではの美味しさを堪能できる。薄味ながらも甘く、しょう油の味が柔らかい。脂っこくなく、後味がさっぱりしている。1960年代の料理のように懐かしくもあり、北朝鮮の料理にも似ている。

 カルビチム3万5000ウォン(約2500円)、同4万5000ウォン(約3200円)、カルビタン8000ウォン(約560円)。ご飯(1000ウォン=約70円)を注文すると、カルビタンのスープがサービスで付いてくる。

安義元祖カルビ店:慶尚南道咸陽郡安義面堂本里12-1

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