フラワーティー。春でも黄色い夏の花を、冬でも暖かい春の花を堪能できる、花のお茶だ。
全羅南道潭陽郡月山面にあるフラワーティー専門店「モルランタレラン」を経営するソン・ヒジャさん(47)は14年間、フラワーティーを研究し続けている。ソンさんは「花は人間と似ている」と話す。「外見だけではよく分からない。きれいだからといって、すべての花をお茶にできるわけではなく、咲いているときよりもお茶にしたときの方が、香りのよい花もたくさんある」
ソウル出身のソンさんが夫と一緒に潭陽郡に引っ越したのは1993年。寝たきりになった義母の看護のためだった。料理が好きだったソンさんは、散歩の途中で見かけたノイバラの花に魅了され、フラワーティーの勉強を始めた。
ソンさんが作るフラワーティーは約150種。実や葉を使ったお茶まで合わせると、250種以上に及ぶ。その中でも1番高価なのが、ちょうど今ごろの時期に飲むモクレン茶。モクレンは乾燥させるのが難しく、途中で茶色に変色してしまうことが多い。モクレンの優雅な白い色をそのまま維持するためには、湿度と温度を一定に保つことが大切だ。乾燥させるときに、花の付け根の部分を上にして乾かすのがポイントだという。
フラワーティーには各種ビタミン、ミネラルが豊富に含まれている。誠信女子大学のハン・ヨンスク教授は、「ノイバラやシャクヤク、ボタンは虫歯や口臭の元となる菌を除去する効果がある」と話す。
フラワーティーには、咲き始めたばかりの花を使う。3分の1程度開いた花を午前10時までに摘み取るという。このときが1番香りが強く、味もよいとされる。摘むときは、親指を使って巻き込むようにすると、花が傷付かないという。
摘み取った後は、花の種類に合わせ、乾燥させたり、水蒸気で軽く蒸すものもあれば、汚れを取り、さっといるものもある。乾燥させるのが難しい花は、ハチミツや砂糖に漬ける。春に咲く花は花びらが薄く、ハチミツに漬けると溶けてしまうため、ほとんど乾かしたものをお茶にする。日陰でゆっくりと乾燥させた後、1時間程度強い日差しの下で天日乾しし、湿気を完全になくす。塩水(1%)で花を洗ってから乾かすと、変色を最小限に抑えることができる。乾燥させた花を使ったフラワーティーは、密封して保管する。短期の場合は冷蔵庫、長期の場合は冷凍室で保存する。ビニールの袋はほかのにおいが染み込みやすいため、できれば二重に包装して使った方がよい。
「氷花」を作っておくと、長期間にわたり、花の氷を楽しむことができる。主にウメやスミレ、サンシュユ、レンギョウ、サクラなど、小ぶりで香りの強い花にはこの方法がおすすめだ。一般の家庭で使う製氷皿に水を7分目まで入れ、その上に花を浮かべて凍らせると完成。ただし、花を浮かべる際は、体温が花に伝わると、変色しやすくなるため、ピンセットやはしを使うとよい。
ソンさんは、フラワーティーを難しく考えすぎないように、とアドバイスする。格式にこだわるのではなく、いつでも気楽に飲むことが健康にも良いという。しかし、ハーブティーは誰にでも効き目があるという訳ではない。初めて飲んだとき、頭痛やのどに刺激を感じたときは、自分の体質に合わないということなので、それ以上飲まない方が良い。
■春のフラワーティー
菜の花茶:菜の花は辛味があるが、お茶にすると、ほのかな甘みが出る。視力の改善、止血に効果がある。
サンシュユ茶:利尿作用や血圧を下げる効果がある。
レンギョウ茶:糖尿、消炎、解熱、抗菌のほか、炎症を抑える効果がある。
モクレン茶:蓄のう症、鼻づまり、頭痛のほか、血圧を下げる効果がある。モクレンの中でも、白い花は特に上品な味わいで、最高級品とされている。
モモ茶:便秘解消、美容に効果があるほか、沈痛作用もある。
ライラック茶:苦みがあるが、赤痢に効き目がある。
サクラ茶:二日酔いを解消し、嘔吐(おうと)を抑える効果がある。
アンズ茶:のどの乾きを抑える。甘く、香りが強い。
カリン茶:消化を促進する効果がある。
スミレ茶:婦人病や胎毒に効果がある。
レンギョウ茶:たんや喘息に効き目があるが、葉が出る前の花だけを使う。
タンポポ茶:消化不良や便秘に効き目がある。氷花の材料としてよく使われる。
ボタン茶:血行を良くする効果があり、生理不順を改善する。
アカシア茶:腎炎や気管支炎に効き目があるが、若葉は過敏反応を起こす場合があるため、要注意。
松茶:高血圧、神経痛、頭痛に効き目がある。
百花茶:100種以上の花をブレンドしたお茶。春のスイセン、ウメ、レンギョウ、夏のアジサイ、ミツバウツギ、秋のキク、初冬の緑茶などがブレンドされている。
■フラワーティー専門家のソン・ヒジャさんは「格式にこだわらず、気楽に飲むことが健康に良い」と話す。
■鮮やかなピンクのお茶(左)は千日草茶。右の薄緑色のお茶はパンジー茶。