映画『雲から抜けた月のように』(イ・ジュンイク監督)に出演した俳優ファン・ジョンミンは、動物的な感覚が光っている。同作品の中で盲目の剣客を演じるファン・ジョンミンは、何げない表情、歩き方、手の動き一つにも「演技」がにじみ出ている。
同名の漫画を映画化した『雲から抜けた月のように』は、壬辰倭乱(文禄・慶長の役)直前の16世紀の朝鮮を舞台に、自ら王になろうとする反乱軍イ・モンハク(チャ・スンウォン)と、彼に立ち向かい、世の中を守ろうとする盲目の剣客ファン・ジョンハク(ファン・ジョンミン)の対決を描いた時代劇。
鋭い洞察力と並外れた武術の腕を持つ盲目の剣客ファン・ジョンハクとして、反乱軍のイ・モンハクと対決する人物を演じるファン・ジョンミンは、盲学校で授業を受けるなど、ファン・ジョンハクに成り切るための努力を惜しまなかった。
俳優としてだけでなく、一人の人間ファン・ジョンミンとしても意味深い経験だった、というのが、今回の作品に対するファン・ジョンミンの感想だ。
-撮影時、アドリブから誕生したシーンやセリフが多かったと聞いているが。
「すべてのシーンはアドリブが半分、あらかじめ決められていたセリフが半分だった。細かい動きや乱暴な言葉遣いなどは、その場の気分で演じた」
-キョンジャ役のペク・ソンヒョンと殴り合うシーンや、口げんかをするシーンが特に面白い。
「ファン・ジョンハクは本当に寂しい男なのだが、最初で最後に出会ったパートナーがキョンジャだ。キョンジャに対しぶっきらぼうに接するけれど、心の中では温かく見守っている、というイメージで演じたかった。だから撮影のときも、ソンヒョン君に同じように接した(笑)」
-盲人の演技は難しかったか。
「まず盲学校に行き、自分の体で感じたり、子どもたちの話を聞いたり、ビデオに撮って分析したりした。つえのつき方や、はりの授業も参観した。でも、いくらうまく演じたとしても、結局はまね事に過ぎないのではないか、というジレンマに陥った。それならば、目の見えない人を、どれくらいうまくまねるかではなく、ただ目をつぶって自信を持って演技をしてみようと思った。まねをするよりもっと重要なのは、ファン・ジョンハクという人物と観客がどのように疎通するかということなのだから」
-作品の中のファン・ジョンハクは、理想を追い続ける人物だと言えるが、ファン・ジョンハクが夢見る理想は何だと思うか。
「醜い争いをしない生き方だと思う。当時、党派同士の対立が最高潮に達していたから。500年前の人々の姿が現代人と似通っているのを見ると、何と皮肉なことか(笑)。ファン・ジョンハクのセリフの中で、『俺は広い道より、裏道の方が好きだ』という言葉がとても気に入っている」