800年前、高麗時代の人たちはお酒を酌み交わしながら、興に乗って美しい詩歌を詠んだ。 当時詠まれた詩歌の一つ、「翰林別曲」(1215-1216)の第4章に登場する「梨の花が咲くころに作った酒」とは、最高級マッコリ(韓国式濁り酒)の「梨花酒」のこと。
「これはお酒? それともヨーグルト?」
初めて梨花酒を見る人たちは、まずこのような反応を示す。梨花酒はかなりドロっとしていて固形状に近いからだ。まるで象牙色をしたヨーグルトのようで、スプーンですくって食べることができるほどだ。
この梨花酒は2年前に復元された。麦麹を使う一般のマッコリとは違い、コメ麹で作る。濃厚な白い色に、麹特有の香ばしい香りが特徴だ。かすかにリンゴのような香りもする。甘味と酸味が強いが、のどごしは滑らかだ。アルコール度数は普通のマッコリ(6-7度)よりもかなり強い(13-14度)。
さらに、その値段を聞くと、多くの人が驚く。700ミリリットル入り1本が8万ウォン(約6700円)。普通のマッコリに比べ60倍以上もの値段だ。梨花酒を復元した麹醇堂のチョ・インヨン主任研究員は、「手作りで少量生産しているため」と説明する。販売店も一店舗に限られ(現代デパート狸鴎亭店)、昨年の秋夕(チュソク、韓国の旧盆)に発売された1000セットは、1週間で完売したという。
しかし、梨花酒の作り方はそれほど複雑ではなく、材料も単純だ。準備するのは、コメ粉を蒸して作ったもち、コメ、水のみ。
4月1日、京畿道の麹醇堂伝統酒研究所で梨花酒作りに挑戦してみた。その場ですべての過程を体験するため、 麹醇堂側が予めすべての工程を準備しておいてくれた。材料はコメ粉を蒸して作ったもち、コメをそれぞれ1.5キロずつと、水1.5リットル。この材料で梨花酒3.5リットルを作ることができるという。もちは必ず、塩も砂糖も入っていないものを使う。
まず、酒を発酵させる麹を作る。コメをきれいに洗い、水に浸す。春の陽気ならば、約2時間程度浸すとよい。その後、3時間かけて水気を切る。チョ研究員は「水分が多すぎると、麹にした後で腐りやすくなるため、しっかりと水気を切ることが大切」と説明した。麹が腐ると、赤や緑の「悪い」カビがつく。必要なのは黄色の「よい」カビだ。
十分に水気を切ったコメをミキサーにかけ、これを大人の握りこぶし程度の大きさに丸める。この大きさが重要で、アヒルの卵程度が適当だという。
松の葉を敷いた容器に丸めた生地を並べ、1週間ほど寝かせる。三日目ぐらいから、薄い色をしたカビが綿のように表面を覆う(温度は25度を基準にした場合)。
たっぷりカビが生えた生地を12等分ほどに分け、日光に当てて1日程度乾燥させる。こうして発酵に必要な微生物を活性化させることによって、雑菌を殺菌し、長期間保存が可能になる。
乾燥した生地を再びミキサーにかける。粉状にした方が水に溶けやすいからだ。これを水と混ぜ合わせ、コメ粉を蒸して作ったもちと一緒に容器の中に入れる。
10-14日程度で発酵するが、1週間過ぎたころから表面に泡ができ始め、ブクブク音がするようになる。このときから酸味のあるヨーグルトのような香りがし始め、3週間後には最高級のマッコリ「梨花酒」が完成する。冷蔵庫で3カ月間保存が可能。