インタビュー:ソン・イェジン、演技を語る


 ここまできたら変装だ。ぎゅっと結んだパーマヘア、目の下から鼻先まで広がったくま、難解なファッションセンス。表情はさらに不思議だ。自分を振った恋人(キム・ジソク)にはネジの抜けた女性のようにヘラヘラし、腹が立っても責めることなく顔をゆがめる。恋人に振られて魂が抜けたときは、本当に顔の力が抜けていた。

 最近、「壊れた」演技を見せる女優が増えているが、その中でもソン・イェジン(28)は極端だ。清純なルックスでアピールしたデビュー当初はもちろん、昨年も美しく神秘的な雰囲気(映画『白夜行』)を見せていたが、今は水木ドラマ『個人の趣向』(MBC)で、間抜けなオールドミスの家具デザイナー、パク・ゲインにすっかり打ち込んでいる。

 「独特で雑で、汚らしいキャラクターです(笑)。でもその中に愛くるしさがあります。無性に近かった少女が愛を知り、女性になる姿をお見せします」

 ソン・イェジンは「周りから“お前ではないと思った”“あまりにもひどすぎやしないか”と言われますが、わたしはマンガみたいで面白い設定が好きなので、壊れることに対する不安はありませんでした。むしろ監督に、“もっとやりましょうか、やらない方がいいですか”と聞くこともあります」とはずんだ声で話した。

 『個人の趣向』は、オールドミスとゲイ(に間違われる)男のおかしな同居生活を描いたドラマ。劇中、恋人を親友に奪われたゲインが、冷たくて冷静なチョン・ジノ(イ・ミンホ)をゲイと誤解し、ルームメートとして受け入れるというストーリーだ。ソン・イェジンが言うように、「男女を超え、人間対人間の愛から出発するロマンチック・コメディー」だ。

 1999年にCMでデビューしたソン・イェジン。映画『ラブストーリー』、ドラマ『夏の香り』などで、清純な顔立ちが印象的な女優として人気を集めたが、ここ3、4年は飾らないバツイチ女(ドラマ『恋愛時代』)、熱血女性記者(ドラマ『スポットライト』)、自由奔放な人妻(映画『妻が結婚した』)など、相次ぐ変身を試みた。『個人の趣向』も、映画『白夜行』以降、明るくて面白い役に対する欲求が強かったことから選択した作品。ソン・イェジンは「20代でなければできない役なので、楽しく肩の力を抜いて演じています」と語った。

 そのためだろうか。清純なイメージが先行していたころ、「見せかけだ」「むかつく」とバッシングする書き込みがあふれていたのとは状況が変わってきた。今では男性より女性ファンの熱狂ぶりが目につくほどだ。

 「わたしも変化を肌で感じています。わざと変身しようとしたわけではないのに…。ただ、真実はいつか明らかになると信じ、自分の目に集中しようと思いました。いずれにせよ、俳優のイメージは一つの壁に振り回されるじゃないですか。すべては演技で見せるしかありません」。

 一方、男性ファンを失ったという喪失感は感ていじないという。「実は男性ではなく、女性たちが共感する演技をしたとき、胸がいっぱいになります」というソン・イェジン。しかし、「切々たるメロドラマの清純なヒロインは、女性として、演じたい思いはいつもあります」と語った。

 「内気な性格なので、感情をすべて出すことができる俳優になりたかった」として始めたが、演技は相変わらず難しくて大変だ。「同じものはやりたくないし、変身しなきゃという圧迫感が激しいです。見えなかったものも今は見えてきて…」。

 デビュー11年目。「多くの作品に出演した、という点については高得点をあげたい」という。経験ほど、立派な演技の師匠はいないからだ。ソン・イェジンは「いつも観客数や視聴率のためにストレスを感じ不安になるけれど、すぐに忘れて次の作品に入ります。結局、残るものは作品しかないから」と語った。
 トップ女優の座を数年にわたり守っているが、ソン・イェジンにはこれといってスキャンダルがない。ソン・イェジンは笑いながら、「人付き合いはうまい方ですが、それが異性感情にはつながらないようです。ややもすると、周りの人々が誤解するかもしれないとも思うからです」と答えた。

 ドラマが終わったら、しばらくはカン・ジェギュ監督の映画『マイウェイ』(仮題)の撮影に集中するというソン・イェジン。「“戦争物語=男の物語”という固定観念を破りたい。今とはまた完全に違うキャラクターです。女性目線で、戦争を舞台にした愛の物語を演じたいです」と意気込みを語った。

パク・セミ記者
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