インタビュー:チョン・イル「それっきりはイヤ、役に入り込みたい」


 上演開始5時間前の午後3時、ソウル市内の大学路にある漢陽レパートリー・シアター。チョン・イルは劇場出入り口の電子ロックに暗証番号を入力し、入って行った。191ある客席はガラガラだ。階段には臨時席が設けられ、舞台を見に来た観客の顔が一人一人はっきり浮かぶ。舞台劇『ビューティフル・サンデー』は先月4日の初演から同28日に幕を閉じるまで、計62回上演された。観客約1万1000人が劇場を訪れ、満席率は平均90%を上回る。

 チョン・イルが演じたのはゲイの青年イ・ジュンソク役。『ビューティフル・サンデー』はジュンソクと、ジュンソクのことが好きなジョンジンが二人で暮らす家で、突然現れた正体不明の独身女ウヌとの間に起きる一日のドタバタを通じ、まじめに愛を描いた作品だ。シチュエーション・コメディー『思いっきりハイキック!』やドラマ『美賊イルジメ伝』、『お嬢さまをお願い!』などに出演した後、初めて演劇にチャレンジしたチョン・イルにインタビューした。



「中学生の時、学校で劇に出演したことはありますが、このように正式な舞台で有料公演をしたのは初めてです」

-舞台自体になかなか慣れなかったのでは。

「初演前は焦ったり不安だったりして、前向きというよりもネガティブな考えのほうが多かったです。はじめは僕にちゃんとできるのかどうかも分かりませんでした」

-ゲイ役ということでプレッシャーはありませんでしたか。

「実はどんな役でも、入り込むというのは一番重要で、大変なことだと思います。『美賊イルジメ伝』もそうだったし、別の役も入り込むまではすごくいろいろ考えなければなりません。ゲイだから大変だというのではなくて」

-ドラマ『個人の趣向』に出演する親友イ・ミンホさんも偽のゲイという役を演じます。舞台は見に来ましたか。

「はい、ミンホもこの間、見に来ました。終わってから会ったら『ふうー。お前本当にゲイみたいだったよ』と冷やかされました。演技がうまかったということなのか、下手だったということなのかは分かりませんが」(笑い)

-知り合いの方も大勢来たのでは?

「昨日はキム・ビョンウク監督と(女優のソ・)ミンジョン先輩が来ました。その前日には(ベテラン女優)ナ・ムニさんもいらっしゃいました。(ベテラン俳優)イ・スンジェさんやファン・インレ監督もいらっしゃいました」

-女性客は「イルさんが上半身ヌードになって登場するシーンで驚いて、目をそらしてしまったけれども、もう一度見た時にはもうタオルを首にかけていて残念だった」と言っていましたが。

「皆さんそうおっしゃいます(笑)。『タオルをかけるのが早すぎるのでは?』って。それでもだいぶ(脱いでいる時間が)長くなりました。初めはドアの前ですぐタオルをかけていましたが、今は舞台の中央まで歩いていってからタオルをかけます(笑)」

-舞台が終わって寂しいのでは?

「ドラマは毎晩徹夜で撮影しますからバタバタしています。でも、舞台は夜8時から10時までと時間が決まっていますから。休演日でもその時間になると何だか悲しくて、寂しくなってくるんです。すべて終わってからも、しばらくこの時間になると余韻が残りそうです」

-ハリウッドのトップスターたちは俳優としていろいろチャレンジします。イルさんも俳優として今後チャレンジしてほしいですね。

「僕も舞台でいろいろ学びました。ここで学んだことを次の作品で失いたくはない。次の作品に備える期間を少し長く取り、台本の分析も以前は10回読んでいたとしたら、次は20回読み込みたい。それっきりではなく、本当に自分自身のものとして刻み込みたいから。ドラマはあわてて撮影するので、自分の実力や、何が今問題なのかも気付かないまま通り過ぎてしまいます。これからは2年に一度は舞台に立ち、足りない部分を埋めていかなければと思いました」

-『ビューティフル・サンデー』で俳優チョン・イルはどれくらい成長したと思いますか。

「これまでは演技というものに対して何かをまねしていたとしたら、今はその役に入り込んで理解するということがどんなものなのか、分かってきたような気がします。よくなっていく途中、学んでいく途中といえるでしょう。

まだ僕の演技の幅は広くありませんから、今はそれを広げていく過程だと思います」

クォン・ヨンハン記者
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