おいしい、クール、そして愛くるしい。料理を素材にしたMBC月火ドラマ『パスタ』(ソ・スクヒャン脚本、クォン・ソクジャン演出)の底力が発揮されるのか? 月火ドラマの視聴率争いは、『勉強の神』(KBS第2)がトップを走っているが、唯一『パスタ』だけが上昇傾向を見せている。1月25日の視聴率は14.4%(AGBニールセン・メディアリサーチ調べ)で、同時間帯2位を記録。『パスタ』の魅力は何だろうか?
タイトルから思い切り食べ物の名前を登場させた『パスタ』は、“視聴率不敗”の料理ドラマとしての強みを十分に生かしている。煮詰まってバターが溶ける音、包丁でまな板を叩く音、料理人の素早い手さばき…。『パスタ』の映像とサウンドはリズミカルでスピーディーだ。
しかし厨房は、バランスの取れた作業場であると同時に戦場だ。注文が大声で行き交い、「はい、シェフ」という返事が自動反射のように聞こえる。一つでもミスがあれば、厳しい叱責(しっせき)が飛んでくるのは当然のこと。気難しい客の返品も多い。一分一秒を争う戦争の中で、一つの芸術作品のように作られる一皿のパスタ。息を切らし、盛り付けられた料理の過程だけでも目と耳が楽しい。
料理に命をかけた4人の主人公の愛や情熱は、戦場のような厨房(ちゅうぼう)ぐらい複雑だ。ラスペラのシェフ、ヒョヌク(イ・ソンギュン)とスターシェフ、セヨン(イ・ハニ)は、しこりが残る昔の恋人。キッチンアシスタントのユギョン(コン・ヒョジン)はヒョヌクのことが好きで、セヨンの恋人であるキム・サン社長(Alex)はケチをつけながらもユギョンを応援する。4人の恋のベクトルは、内に秘めていながらもハラハラする。
しかし、4つの愛憎関係は、戦場さながらの厨房(ちゅうぼう)では徹底的に消される。料理に関する限り、彼らは徹底したプロだ。料理ドラマであり専門職ドラマとして、劇中彼らはお互いの実力を認め、尊重する。ユギョンは、ヒョヌクのパスタを一皿食べて降参する。ヒョヌクは憎しみや腐れ縁を断ち切り、料理コンテストでユギョンの代わりにセヨンに力を貸す。理由はただ一つ。彼女の料理がおいしいからだ。
4人は決して完ぺきではない。主人公ユギョンは3年間厨房(ちゅうぼう)で見習いをしている失敗だらけのロマンチスト。裏切られて傷ついているヒョヌクは、正統派イタリア料理に固執していたがレストランを危機に陥れる。留学生活でヒョヌクに押されて2番手だったセヨンは、テクニックで最優秀シェフの栄誉を手にするが、ヒョヌクを忘れられない。ふてぶてしいキム・サン社長は、揺れる恋人を見ながらもクールなふりをしてやり過ごす。
しかし、この欠点が多い主人公たちは、愛らしくない人が誰一人としていない。洗練された男への変身に成功したイ・ソンギュン、おどおどしたユギョンにそのまま溶け込んだコン・ヒョジン、憎らしいぐらい図々しいAlexはキム・サン社長役がハマリ役だ。ソル社長役のイ・ソンミンも見逃せない。彼らは簡単に涙を流さず、ののしりあいもしない。おいそれと自分を卑下したりもしない。チェ・ヒョヌクも言っていた。他人が自分を愛してくれると確信を持って作った料理が愛されるものだと。自らを愛する、共感できる4人組が作り出す『パスタ』は、だからこそおいしい。