■安定志向のキャスティングと視聴者層の高齢化
「新顔」はなぜ消えたのだろうか。まずテレビ視聴者層が高齢化しているというのが第一の理由だろう。若者のテレビ離れで、「新顔」の商品性が下がっているということだ。
元プロデューサーのドラマ制作会社代表は、「Aクラスの俳優の寿命が徐々に長くなっているのも重要な要因」と話す。
中堅俳優は、整形手術もいとわない徹底した容姿・体力管理で、実年齢より10歳くらい若い設定の主人公を演じても不自然ではなくなった上、演技力もあるため、新人に役を譲る理由がなくなった。
テレビ各局の「安定志向キャスティング」や、マネジメント・制作システムの固定化も「恐るべき新人」の登場を阻む一因だ。人気や視聴率が保障された俳優を使う慣行が定着し、新人が主演するのは厳しい状況になっている。芸能事務所の乱立で、一見新人のチャンスが増えたように見えるものの、実際にはメーンキャストに新人が食い込むのはさらに難しくなった。
テレビ局の「新人発掘機能」が芸能事務所に移行しているのも原因の一つだ。テレビ局の「第○期タレント公募」は事実上、03年以降中止されている。芸能事務所が俳優を養成することで、演技力に深刻な問題が生じているという声もある。『第5共和国』などを執筆した脚本家のユ・ジョンス氏は、「現場で先輩・後輩の演技を見て、下積み時代から演技を学んだ90年代の俳優たちとは違い、最近の新人のほとんどは芸能事務所で機械的に管理され、ドラマに出演する。こうした場合、競争力になるのは『イメージ』と『ルックス』だけ。現場で体当たり的に身につけた演技力や粘り、根性は見当たらない」と話す。
ドラマのジャンルが様変わりしたのも大きい。KBS『バラ色の人生』などを制作したGNGプロダクションのキム・ジョンチャン・プロデューサーは、「90年代はトレンディードラマを中心に、テレビの主な視聴者である20代が見るドラマが主流だったとすれば、2000年代は40代以上が視聴者の中心になり、30-40代の俳優が演技力を発揮できる時代劇や、離婚・独身男女のストーリーなど、それまでとは違ったドラマが増えた。主な視聴者層が40代以上になったことで起きた、テレビ局の『サバイバル論理』」と説明する。事実、90年代は大賞受賞作26作品のうちで時代劇は3作品に過ぎなかったが、2000年代は全33作品中、時代劇が13作品を占めた(『太祖王健』は2年連続受賞)。
放送関係者は、今後もこうした流れが続くと考えている。脚本家のユ・ジョンス氏は「こうした流れを必ずしも否定的に見る必要はない。ハリウッドでも対内的・対外的に大きな評価を得ているのは40-50代の中堅俳優。実力と貫禄で勝負する本当の俳優たちの時代が来たということ」と話している。