隠れ家にしたい都心の休息空間省谷美術館

 世の中には多くの人に知ってほしい場所がある一方、一人だけで静かに楽しみたい、隠れ家的な空間もあるものだ。省谷美術館がまさにその一つだ。今やすっかり有名になり、ソウルっ子なら知らない者はほとんどいないが、つい十数年前までここは「知る人ぞ知る」都心の隠れ家のような貴重な休息空間だった。展示作品だけでvなく、周囲の景観もまた絵になるものだった。そんな省谷美術館を、記者はこのほど訪れた。

 1995年にオープンした省谷美術館は、ソウル市鐘路区新門路にある。ソウルを何度も訪れた方ならお分かりだと思うが、新門路は光化門の近く、言わばソウルのど真ん中といえる場所だ。だが、省谷美術館へとつながる道は、慶煕宮とソウル歴史博物館の裏道だ。大通りから外れた、ひっそりとした道であり、散策を楽しむにはもってこいだ。美術館がオープンした当時は閑静な住宅街があるだけだったが、今では小さな喫茶店やレストランが点在する。

 韓国の大企業の一つ、双竜グループの創業者である金成坤(キム・ソンゴン、1913-1975)の遺志を受けて設立され、その雅号を取って命名された省谷美術文化財団が運営するこの美術館では、主に現代美術の展覧会が行われる。実験的かつ創造的な創作活動を繰り広げる美術家たちに門戸を開いているのだ。また最近は美術展だけでなく、写真展もたびたび開いており、多くの写真愛好家たちが足を運んでいる。カメラを担いだ彼らの姿を見られる理由はそれだけではない。省谷美術館という空間そのものが被写体になるからだ。たとえ写真の才能がなくても、カメラを持って行きたくなる省谷美術館の彫刻公園は、四季ごとに違う色を見せ、訪れる人々を感動させる。今は木の葉が散り、やや荒涼とした感じだが、その寂しさがまた、この季節の独特なムードを醸し出している。見て回るのに10分もかからないほどの小さな丘だが、ところどころに彫刻作品が置かれ、ベンチも据え付けられているため、ちょっと休憩するにはちょうどいい。
 彫刻公園とともに、省谷美術館のもう一つの名物となっているのがカフェだ。テーブルが3-4台ほどしかない、ガラス張りの小さなカフェは、女性であれば誰でも一度は入りたくなるような、魅力的な空間だ。このカフェにいると、ソウルではなく、どこか遠いところにいるような錯覚を覚える。人気のスポットだけに、運が悪ければ満席で入れないこともざらだ。外にもテーブルが置かれてはいるものの、寒い冬にここへ座るのはちょっと酷だろう。
 省谷美術館には二つの展示館がある。展覧会はほとんど、両方の展示館で行われるため、その両方を見て回り、彫刻公園を散策した後、カフェで一休みすれば、有意義な時間を過ごせるだろう。ただ、以前は誰でも彫刻公園を散策できたが、最近は展覧会の入場客や、カフェの利用客だけに開放するようになったのが残念な点だ。ソウルの知られざる一面をゆっくりと紹介するこの企画記事は、省谷美術館を皮切りに、新年にも引き続き連載していく。



■開館案内

*アクセス: 地下鉄5号線光化門(광화문)駅下車、7番出口から西大門方面へ進み、
救世軍会館とソウル歴史博物館の間の路地へ400メートルほど入る。
*住所: ソウル市鐘路区新門路2街1-101
*Tel: 82-2-737-7650
*ホームページ: http://sungkokmuseum.com/english
今、省谷美術館で開催中のイベント: 「踊る写真家」カン・ヨンホ展


 カン・ヨンホは、映画のポスターやコマーシャルの撮影を数多く手掛けてきた写真家だ。いつもは他人の写真ばかり撮って来たカン・ヨンホだが、今回は自らカメラの前に立った。それも、誰もが驚くような姿で…。写真だけでなく、写真展の準備から撮影、展示に至るまで、すべての過程が一つの作品であるかのような印象を与える今回の写真展は、暗闇の中で驚くような感覚を味わう仕掛けになっている。巧みでどこか怖く、そうかと思えば滑稽で、なおかつ美しい姿を見せながら近づいてくる一人の男と対話できる絶好の機会だ。作者の過去と現在、そして未来が凝縮された作品は、長きにわたって余韻を残すことだろう。商業写真家としては珍しく、一気に美術館デビューを果たしたカン・ヨンホ。毎週土曜日午後4時から行われる「作者との対話」に合わせて美術館を訪れれば、彼と直接会うこともできる。

■開館案内

*展示場: 省谷美術館第1展示館全館
*営業時日: 2010年1月24日まで
*営業時間: 10時-18時
*定休日:毎週月曜日
*料金: 5000ウォン

記事=イ・ヒョンジュ 写真=チン・グチ

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