キム・ミョンミンはシャワーを浴びながら、2度気絶したという。極度に敏感になった体にお湯が触れたことで血管が膨張し、気を失ったのだ。キム・ミョンミンは「シャワー室に横たわり、2時間ぐらいたってやっと正気に返ったこともある」と語った。
-そこまでした理由は?
「自ら筋委縮性側索硬化症患者だと思わなければ、スクリーンを通じて観客に見せる自信がありませんでした。やせていないのにそういう演技をしたら、何か不自然でしょ? 体が動かなければ、もっと切実に目で表現するようになります。体だけでなく、感情を引き出さなければならないということです」
映画の最初のシーンで、キム・ミョンミンは左半身が不自由な演技を見せた。キム・ミョンミンは撮影1カ月半前から、左手と左足をできるだけ使わなかったという。「それでも洗車をしている途中で倒れるシーンでは、無意識に左手が上がり、NGを出しました。1カ月半も練習したのに」
-気が強い性格だと言われることはないか。
「そんなことはありません。僕は子どものころから人前でダンスをしたり、演じることが好きでした。学芸会や遠足のときは、いつも皆の前で何か披露していました。中高生のとき、教会で聖劇をしながら、俳優の道について考え始めたんです」
キム・ミョンミンはこの役のオファーを初めて受けたとき、「できないと言って逃げた」という。「ところが演技への欲が出たのではなく、やりたくなくてもやるしかない役があり、やりたくてもできない役があるんですよ」
-体を酷使することから、米国の俳優クリスチャン・ベールに例えられることがあるが。
「クリスチャン・ベールの映画の中で、『Rescue Dawn』という作品があります。そこでクリスチャン・ベールがうじ虫を食べるんですが、僕は、彼が実際にうじ虫を食べたと信じています。あぁ、思い出すだけでもぞっとします。もしうじ虫でなかったら、冷めるでしょ? 結局、どれぐらい真剣さを見せるかの問題だと思います」。キム・ミョンミンはそのほかショーン・ペン、ダニエル・デイ・ルイス、ロバート・デ・ニーロを尊敬する俳優に挙げた。
-それほどの真剣さなら、俳優ではなく違う仕事をしても上手くいくのでは?
「事業をしていたら、早くに成功してお金もかなりもうけていたと思います」
-自分の姿を鏡で見て満足するタイプ?
「全然満足できません。俳優の顔ではない、とよく言われます。以前は、華やかな役は全くできませんでした。いつも物乞い、最下級の軍人、そういう役ばかりでした。ところが…、今思うと、僕の顔は俳優にふさわしいと思います」
キム・ミョンミンは以前の体重より軽い65-66キロをキープするつもりだという。今回の減量で体重がそれぐらいのとき、「反応が爆発的だった」と話すキム・ミョンミン。「10歳は若く見える」「若手俳優イ・ミンホみたい」と言われたという。
次回作について問いかけると、こう答えた。「決めていません。体が最高のコンディションでないのに、今次の作品を決めるのは無責任なことではないでしょうか」。東亜新国語辞典によると、形容詞「気が強い」を(1)毒性が多い(2)むごくて残忍だ(3)我慢して耐える力が不屈だ、と説明している。キム・ミョンミンは気が強い人間だった。