ソウル市江南区清潭洞の裏通りにある中華料理店でチョン・ウソン(36)が食事をしていた。9月25日、たくさんの記者たちが一日中この店を出入りしながら、チョン・ウソンにインタビューをした。秋夕(チュソク、韓国の旧盆)が近いせいだろうか。清潭洞周辺の道は激しく渋滞していた。記者たちが約束の時間に遅れたことで、チョン・ウソンは久しぶりにゆっくり食事ができたようだ。午後7時50分からインタビューを始めたが、その後もまだ2社残っているということだった。
8日に公開されるホ・ジノ監督の映画『きみに微笑む雨』を中国・成都で撮影したチョン・ウソンは、同市について「大きい都市だったため、むしろ不便だった。(ホテルの)外に出たくても外出もできないし」と話した。チョン・ウソンにとっては、ソウルも同じようなものだろう。人気とはコルセットのように、見かけがいいほど体を締め付けるものだ。
-試写会の舞台あいさつで、「ホ・ジノ監督と一緒に仕事をすると死ぬほど苦労する」と冗談を言っていたが、それはどういう意味なのか。
「実際、苦労しました。精神的な苦労が一番辛いじゃないですか。僕とあまりにも違うタイプのため、最初はすごくもどかしかったです。僕はずっとテンポが速く、規模の大きい作品に出演してきました。それぞれのカットに『こういう風に動く』という設定があって、その通りに演技をしてきたというか…。ところがホ・ジノ監督は、『カット』と言っても、OKなのかダメなのか何も話さないんです。俳優を前にして何かを探り出そうとしているというか…。『もしかして作品に自信がないのか』と思ったり、『あの有名なホ・ジノ監督にそんなことあるはずがない』と思ったり、いつも不安にさせられました」
-作品を見て、どうだったか。
「だからこそホ・ジノであり、ホ・ジノ式のラブストーリーというものがあるのだと思いました。ホ・ジノ監督は自分自身に問いかけ、その答えを探していくのが、キャラクターを作る過程だと思っているようです」
チョン・ウソンは「もう1度ホ・ジノ監督と一緒に仕事をする機会に恵まれたら、もっと気楽にできるような気がします」と話した。チョン・ウソンは1997年、映画『ビート』で人気絶頂期にあったとき、ホ・ジノ監督のデビュー作『8月のクリスマス』の主役をオファーされた。しかし出演を辞退した。「『8月のクリスマス』のシナリオはあまりにも完ぺきでした。その完ぺきさを僕が壊してしまうのではないかと思ったのです。僕がその役を演じることができるのか、という不安もありました。主人公だけではなく、作品全体のイメージをうまく消化する自信がありませんでした」
チョン・ウソンはこの後、『春の日は過ぎ行く』『ハピネス』と引き続きオファーを受けたが、そのたび、やむを得ない事情で出演を断ってきた。