インタビュー:NHKソウル支局長の伊藤良司さん

韓国を知るにはホームステイを!


 ベルギー、フランス駐在を経て、今では韓国で合計8年以上を滞在し、韓国のニュースを日本へ発信しているNHKソウル支局長の伊藤良司さん。彼に会うために韓国の公営放送・KBSへ向かった。各国のメディアが集まるフロアーに、NHKソウル支局の事務室は落ち着いていながらも、時々刻々と変わる韓国の情勢に注目する記者とプロデューサーと慌しさが感じられた。

 伊藤さんとのインタビューが予定されていた時間、折しもアメリカのクリントン元大統領が北朝鮮に抑留されていた2人の女性記者のため、北朝鮮入りをするというニュースが流れた。北朝鮮と関わるあらゆることは、日本としても目が離せず、非常に敏感なニュースだということで、やむを得ず多少遅れてのインタビューとなった。

-NHK ソウル支局についてご紹介ください。

 1960年5月に開設されました。韓国のKBSがNHKと協力関係にあるので、ここKBS本社に支局を置くことになりました。他の日本のメディアも、それぞれ協力関係の韓国の放送局内に支局を置いています。例えばフジテレビのソウル支局もMBC内にありますね。当時NHKソウル支局には記者が1人しかいませんでした。1985年からプロデューサーと特派員が加わり、今では支局長のほかに3人の記者とプロデューサーが1人います。私たちの仕事は、日本と関連した韓国のニュース全般を伝えることです。分野は多岐にわたりますが、中でもやはり政治と経済が多いですね。

-韓国にはいつ来られましたか。また、韓国の生活はいかがですか。

 韓国に来たのは1994年のことです。実はあまり来たくなかったです。韓国人はみな日本が嫌いだということ以外に、情報はほとんど持っていませんでした。そんな私に上司はこう言いました。まず行ってみてどうしてもいやだったら戻って来いと。そうやって延世大学の韓国語学堂で1年間韓国を学び、1996年から2001年まで特派員をやって、帰国後、2008年に再び支局長として赴任しました。いざ来てみたら思ったのとはかなり違うんですね。人々も親切で面白かった。外国人が韓国で頑張っていると、下宿のおばさんも親切にしてくれました。そして、韓国人は日本があまり好きではないけど、一方では憧れの気持ちも持っていることも知りました。個人的にも韓国は縁が深い国です。家内と知り合ったのも韓国ですからね。娘の名前も韓国の伝統楽器・伽耶琴(カヤグム)から「伽耶」と名づけました。日本人とは違って、情が厚くそれを包み隠さず表現する人たちなんだなと、つくづく思いますね。

-韓流についてどう思いますか。

 金大中元大統領が日本大衆文化の開放措置を取ってから、韓国に対する日本人の関心も高まってきたと思います。その前も韓国の大衆文化は日本に入っていたのですが、流行るというほどではなく、韓国でも日本の大衆文化が禁止されていたんですね。いずれにしても開放措置がきっかけになって大衆文化の交流が一気に活性化し、今ではものすごい韓流ブームなんですね。

-週末にはどう過ごされますか。

 家族と一緒に近くの龍山公園へ行きます。大勢の人で混雑したところは、子供がいるからあまり行かないほうですね。

-韓国を訪れる日本の観光客にアドバイスを一言お願いします。

 外国を旅行するとき、現地の言葉が分かればよりたくさんのことが経験できるし、楽しめます。文化というのは言葉にも表れるものなんですね。一日ほんの少しでも良いので、韓国語を勉強すればもっと楽しい旅になるでしょう。そして、もし時間があれば龍仁にある韓国民俗村に行って、昔風の酒場でトントンジュをぜひ飲んでみてください。国立中央博物館や慶福宮や徳寿宮も良いと思いますよ。それからディープな韓国が知りたいという方には、下宿かホームステイをお勧めしたいですね。韓国人と一緒に暮らしてみて初めて、普段は感じ取られない韓国ならではの感性や感覚が分かってくると思います。

日本酒専門店「春山」

 伊藤さんはどちらかといえば素朴で庶民的な料理が好きだという。お酒を飲むときはトントンジュやマッコリを、料理はカルクッスや韓国食をよく食べる。自宅では日本人の妻が作ってくれた日本の家庭料理だが、特に辛い韓国料理が好きな彼は、武橋洞の「タコの激辛炒め」、会社付近の「部隊チゲ」の店にもよく訪れるという。それでもたまには日本の居酒屋が恋しくなるもの。そんなとき、彼は鍾路にある居酒屋「春山」に足を運ぶ。
 オーソドックスな居酒屋とはいえないが、アットホームな雰囲気とインテリアが目を引く「春山」。4年前にオープンした本店は鍾閣駅近くの清進洞に位置する。4階建ての木造建物で周辺のオフィス街で働く2,30代のサラリーマンや大学生、そして女性を主な顧客としている。1階はカウンターになっていて、料理が出来上がる様子を見ながらお酒が飲める。ただし、グループで座るには多少不便かも。2階と3階は畳の和室になっており、グループで一緒に飲みながら楽しめるスペース。全面ガラス張りになっているため、外の光景も眺められる。4階は主に会食のサラリーマンや団体のお客のための空間である。
 日本酒専門店にふさわしく、韓国で最も多い種類の日本酒を用意しているのが春山の最大の特徴。100種類以上の日本酒はすべて日本から空輸してきたものだという。店長のコ・ビョンファさんの話では、以前は日本でも韓国でも熱燗で飲むのが普通だったが、最近は冷酒が通だという。製造工程が進化したため、あえて沸騰させて飲む必要がないからだというのが彼の説明。


 ここ数年、韓国でも日本酒が大人気で、日本風の居酒屋が流行っている。たくさんある居酒屋の中でも伊藤さんが「春山」を一押しとする理由は、店の雰囲気や多種多様な日本酒のほかにも、さしみ、串焼きなどといった料理の味にある。ニンニク、銀杏、鶏肉、ネギ、手羽先など、12種類の串焼きや豆腐料理、コロッケなどのおつまみ類のほかに、おでん鍋、海鮮鍋なども魅力的だが、中でも伊藤さんのお勧めは刺身。ソウルを旅して、日本酒が恋しくなったら、春山で一息入れ、本場との味比べをしてみるのはいかがだろうか。

■開館案内

*アクセス: 地下鉄1号線鍾閣駅1番出口を出て、農協中央会手前の路地に入ってすぐ左

*住所: 鍾路区清進洞127番地

*Tel: 82-2-732-1356

*営業時間: 平日 17時30分―深夜2時 土曜日 17時30分―深夜12時30分

*休業日: 毎週日曜

記事=オ・スンヘ 写真=チェ・ヨンデ、チング

<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c)Chosunonline.com>
関連ニュース