食欲を呼び覚まし夏バテを吹き飛ばす味 /全羅道(上)

 コムソ港にある食堂には大抵、塩辛定食というメニューがある。姉妹食堂の塩辛定食(8000ウォン=約600円)は、10種類の塩辛のほか、さらに10種類のおかずがテーブル一杯に並ぶ。塩辛はタチウオ、カタクチイワシ、サッパなど、全羅道地方の人たちが好む強烈な味付けのものから、スケトウダラの内臓、イイダコ、カズノコのように、塩辛を食べ慣れていない人たちでも食べられるものまでさまざまだ。塩辛の種類はその時々によって変わる。

 塩辛はそれぞれ薄味でコクがある。圧力鍋で炊いた熱々のご飯に塩辛をのせて食べると、夏バテですっかり食欲をなくしていたことも忘れてしまうほど、食が進む。いつの間にかご飯1杯をペロリと平らげ、次の1杯に手が伸びる。恥ずかしいほどお代わりをしてしまう人も多いだろう。塩辛という主人公の影に隠れてしまいがちだが、長い間漬けておいたキムチや浅漬けキムチ、ナムル類など、ほかのおかずも塩辛に負けないほど美味しい。ソウルなら、この店の突き出しとして出されるサバの煮つけをメインに食堂をオープンできるほどの絶品だ。

■姉妹食堂:全羅道扶安郡鎮西面コムソ里1214


 コムソ港に立ち寄って、塩辛を買わない人はいないだろう。コムソ港の周辺には塩辛専門店が数十店も集まっている。塩辛の種類や値段はどこもほとんど同じだ。漁村係長ムン・ドンギさんが営む「ソリネ」の場合、エビの塩辛(特に6月に捕れたエビで作った塩辛)は2-4万ウォン(約1500-3000円)、明太子2万ウォン、ホタテガイの塩辛1万ウォン(約750円)、タチウオの内臓の塩辛8000ウォン、イイダコの塩辛7000ウォン(約525円)、アサリの塩辛1万ウォン、カキの塩辛1万2000ウォン(約900円)。値段はすべて500グラム基準。カタクチイワシの塩辛は4.5キロ入りが1万ウォン、10キロ入りが2万ウォン。5万ウォン(約3750円)以下のものを注文すると3500-4000ウォン(約260-300円)の送料がかかるが、5万ウォン以上の場合は送料無料だ。

■ソリネ:扶安郡鎮西面コムソ里829

 辺山半島に行くと、「アサリがゆ」という看板を掲げた食堂が多く立ち並ぶ。海岸から狭い山道を抜け、少し上ると、「辺山温泉山荘」という名の温泉付き旅館がある。1993年、初めてアサリがゆを作り客に出したシン・ユンヒさん(62)の息子、ハン・サングクさん(37)は、「宿泊客が朝食をリクエストしたため、母が朝食として準備するようになった。今ではアサリがゆをメインに商売をし、温泉と旅館の営業はやめた」 

 注文が入ると、研いでおいたコメにアサリの汁、緑豆、生の高麗人参、ニンジン、アサリの身を加え、一緒に炊き込む。十分に柔らかいが、コメ粒が崩れていない程度のおかゆだ。アサリのだしとコメが一体となってかもし出す味わいに、緑豆の香ばしさ、高麗人参のほろ苦さ、アサリのシコシコとした食感が一つになり、何ともいえない風味を引き出している。熱々のアサリがゆをスプーンですくい、その上にカラシナのキムチをのせ、フーフー吹きながら食べると、さらに格別だ。ダイコンのしょうゆ漬けやイカの塩辛、古漬けのキムチも、アサリがゆとの相性は抜群だ。

■辺山温泉山荘:扶安郡辺山面大項里109-2

キム・ソンユン記者
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