キム・ナムギル、ブレークの裏側語る=『善徳女王』

「ミシル」コ・ヒョンジョン人気を超えた男


「漫画『スラムダンク』『バガボンド』モデルに天才武者演じる
初心に戻ろうと芸名やめたらブレーク

 しゃれた芸名を捨てたら、人気が出た。MBC時代劇『善徳女王』を視聴率40%という大台に乗せたのは、主人公・善徳女王役のイ・ヨウォンでも、敵役ミシルを演じるコ・ヒョンジョンでもなかった。制作スタッフが「秘密兵器」と呼び、いきなり登場させた平凡な名前の男、キム・ナムギル(28)だった。数十本もの剣が鼻先をかすめるような戦場でも、片側の口角を上げ「チッ」とほくそ笑む余裕を持つ武者ピダム役。見慣れた顔なのに、名前は初めて見る。2003年にMBC公募タレント第31期生としてデビューした彼は、「イ・ハン」という芸名で活動、『頑張れクムスン』『恋人』などで注目された俳優だ。

 その後、しばらく振るわなかったが、「テレビに出ないと忘れられてしまう芸能人の宿命を悟りました。そして、『俳優として着実に成長しよう』『初心に戻ろう』という気持ちから、本名に戻しました」。それが2008年のことだ。当時、キム・ナムギルは映画『カン・チョルジュン:公共の敵1-1』に出演、それから『モダンボーイ』『美人図』などでもその名と顔を知られるようになった。

 このところの「ピダム旋風」については、「人物設定のおかげ」と控えめに語る。

 「主な視聴者は中高年層という韓国の時代劇で、ピダムのような登場人物はほとんど初めてといっていいのでは? 戦うときはブンブンと空を飛び回ったかと思うと、普段は純朴で、メチャクチャな言葉や行動ばかりの『変わり者』。表情もクルクル変わるし、感情の起伏も激しいでしょ。自分はミシルが捨てた息子だという出生の秘密を知ってからは、悪役になっていくのですが、すべてが複雑で、多重構造的です」

 初めてピダム役のオファーを受けた時、学生のころ大好きだった日本の漫画『スラムダンク』の主人公、桜木花道を思い浮かべたそうだ。「ピダムは普段は能天気だが、決定的な瞬間では自分でも知らないうちに天才的な才能を爆発させる人物だと思いました。それって、桜木花道そっくりでしょ。脚本家のキム・ヨンヒョン先生も、漫画的な役作りに前向きな姿勢を見せてくださり、勇気づけられました」

 また、『スラムダンク』の作者・井上雄彦の別の名作漫画『バガボンド』の主人公にも影響を受けたという。

 キム・ナムギルは高校卒業後、すぐに劇団が多いソウル・大学路の演劇界に身を投じた。演技に関する大学の学科に2度も入学したが、数回授業を聞いて「これ以上得るものはない」と思い、通うのをやめてしまった。「僕にとって、演技は入試に備えながら学ぶのも、大学で学ぶのも、大差なかったんです。だから、現場でぶち当たるのが正解だと思いました」。

 「以前、ポータルサイトに掲載されている僕のプロフィールに、『○○大学在学中』と書かれているものがありました。でも、『入学しただけだから高卒に変えてほしい』って、一つ一つ連絡しました」。彼は今、大学から除籍されている状態だ。

 大きな夢を抱き、大学路の演劇界に飛び込んだが、注目を浴びることはなかった。やることと言えば掃除ややかん運びばかり。「大学路では、30代中盤を過ぎて初めて、まともな演技ができる主演クラスと認められます。だから僕も早く30歳になりたいといつも思っていました」。

 身長184センチで、普段は体重が77キロ前後だが、今は63キロだ。「公開予定の映画『暴風前夜』と『善徳女王』のためダイエットしました。最近はもう少し体重を増やそうと思っていますが、撮影スケジュールがハードで無理」とため息。彼のファンサイトには「娘」がいっぱいだ。このバーチャル空間で、キム・ナムギルは「お父さん」、女性ファンたちは「娘」と呼ばれているからだ。「家庭が平和だと外の仕事もうまくいくというじゃありませんか。ファンサイトは僕にとって家庭と同じなので、『僕が父親になる』と言いました。30-50代の女性ファンの皆さんも、ご自分のことを『娘』と呼んでいます。ちょっと変ですか?」。

チェ・スンヒョン記者
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