風に研ぎ澄まされた半島の絶景「赤壁江」 /扶安


 かつて人々が避難場所として利用していたところが最近、景色の美しい名所として脚光を浴びている。風水の専門家たちが、天災や争いごとが起きても安心して暮らすことができると太鼓判を押した「十勝之地」。全羅北道扶安郡辺山面がその一つだ。真夏の日差しが照りつける8月中旬、隠とんのこん跡をたどるため、扶安郡の地図を開いた。南北を貫通する西海岸高速道路が、太いサインペンで書いたようにくっきりと浮かび上がる。

 「十勝之地は必ずしも奥地というわけではありません。それだけ場所がよく、人を保護してくれるという意味です。扶安郡の人たちは、その気運が集まった場所として赤壁江を挙げています」

 文化観光解説者のコ・ユンジョンさん(44)の説明を聞いて、西側の端の赤壁江(扶安郡辺山面格浦里252-20)へと向かった。中国の赤壁江と雰囲気が似ていることから名付けられた辺山面の「赤壁江」は川ではなく、約2キロにわたり続く海岸線だ。古い本を数万冊積み重ね、切れ味の悪いナイフで切り落としたかのような絶壁は、とても静かだった。みこらしき4人が色とりどりの布を手で破く姿は、神秘的ながら軽快に見えた。

 ここに多くのみこたちが訪れる理由について、コ・ユンジョンさんは「風浪を鎮め、漁民たちを守ったという女海の伝説のため」と説明する。西海(黄海)を望む赤壁江の絶壁の上に建っている水聖堂は、イシモチ漁で有名だったチルサン海の方向を向いている。漁民たちを守る海の女神に祈りをささげた場所が水聖堂だったという。背が高く木靴を履き、西海を歩きながら水深を測り、風を操ったという女神の姿を想像しながら、人々はそれぞれが抱える「風浪」をこの静かな海に解き放っていく。

 赤壁江から辺山海岸道路を通って南に向かうと、近くの島に渡る船乗り場があるキョクポ港、約7000万年前のたい積岩が海辺に広がる彩石江、塩田や塩辛で有名なコムソ港、チュルポ自然生態公園(扶安郡チュルポ面牛浦里)にたどり着く。

 公園の入り口から約10分歩くと、人工島の近くに湖がある。この湖にはプクプクとしたカモ9羽が人間と遊ぶのを楽しみに待ち構えている。園内で1袋1000ウォン(約70円)のエサを売っている売店の女性は、「カモたちは親子ですか」という質問に、まるで自分の家族について聞かれたかのように「はい!」と答えた。エサを買って湖に投げてみた。するとカモたちがスイスイ泳いできてうれしそうにエサを食べる。もたもたしていると、水から上がってきて早くエサをくれと大騒ぎだ。しかし袋の中のエサがなくなった瞬間、未練なく後ろを向き、サッサと湖に戻ってしまった。賢いがちょっぴりクールなカモたちと遊んでいると、時間はどんどん過ぎていく。対岸で楽しそうに遊んでいるカモたちを見ながら、風通しのよい東屋に腰かけて休憩する。世にあふれる天災や争いごとが、眠気の中でゆっくりと溶けていくかのようだった。

扶安=キム・シニョン記者
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