ここまでがチョン・インヨプ監督の作品だ。映画ライブラリー「青春劇場」のアン・ギュチャン代表は、「『愛麻夫人』シリーズのうち、作品性やオリジナリティーを備えた映画は、この4作とチョン監督が制作を手掛けた『ジプシー愛麻』(1990)くらいだろう。残りの作品については、そもそも所蔵していない」と語った。
1990年からは同シリーズが量産された。チュ・リヘ主演の4作目(1990)、ソ・ビア主演の5作目(91)、タ・ヒア主演の6作目(91)、ルミナ主演の8作目(93)などがある。『愛犬夫人』(90)、『愛麻とドラキュラ』(94)といった作品まで作られた。9作目(93)の主人公は、日本のAV作品への出演疑惑で波紋を呼んだチン・ジュヒだった。
同シリーズの絶頂期は95年だった。1年間で6作も市場に送り出されている。「missy族愛麻」というコピーが付いた11作目、ナンバー付きとしては最終作の12作目のほか、『愛麻とごろつき』『愛麻とピョン・ガンセ』『真っ赤な愛麻』『赤道の愛麻』の各作品がそれだ。
それからは下り坂だった。97年の『愛麻夫人の娘』、そしてソ・ビア、チン・ジュヒが共演した98年の『愛麻セクシーワールド1・2』が、確認可能な最後のシリーズ作となっている。折しも一般化しつつあったインターネットが、「うす暗い劇場での性的解放感」を過去の遺物にしてしまったというわけだ。
詩人のクォン・ヒョクウンは、詩『愛麻夫人略史』でこのように書いている。「愛麻の下には夫、愛麻の上には愛麻ボーイ、その上にはわたし…わたしたちはあのように、火格子の上でべったりと、体を熱くして声を上げ、一時代を過ごしてきた」
映画のタイトルは当初、馬を愛するという意味の『愛馬夫人』だった。しかし、当局の圧力で『愛麻夫人』に変えられ、全く意味が分からなくなった。