自然と調和を成す韓国を代表する宮廷昌徳宮(下)

■楽善斎

 大造殿を通り過ぎて少し歩くと、端正な印象の「楽善斎」が見える。1847年に建てられた楽善斎は、朝鮮第24代王の憲宗とその後宮・慶嬪の愛の物語が伝えられている場所だ。正確に言うと、楽善斎・錫福軒・寿康斎などの建物があるが、これらをまとめて楽善斎と呼んでいる。楽善斎は憲宗の書斎兼居間で、錫福軒には慶嬪が、寿康斎には憲宗の祖母にあたる大王大妃(第23代純祖の王妃)が住んでいた。


 憲宗は、王妃・孝顕王后がこの世を去った後に行われた新王妃選びの中で、金(キム)家の少女(後の慶嬪)を見初め、心を奪われた。しかし、王自身に決定権はなく、大王大妃が選んだ明憲王后を王妃として迎えるしかなかった。その後3年がたっても子どもに恵まれなかったため、憲宗は心に留めていた金家の少女を後宮として迎え、自身が住む楽善斎のすぐ隣に錫福軒を建て、住まわせた。後宮のために宮殿を建てるのは、当時としては非常に異例なことだったが、慶嬪に対する憲宗の愛情がどれだけ深いかをうかがわせるエピソードだ。

 憲宗は質素で先進文化に関心を持っていたと言われている。楽善斎はそうした憲宗の趣向がそのまま現れている建物で、丹青(宮殿などに描かれる彩色模様)を施さず、素朴な窓格子や壁の模様など、随所に清の影響がうかがえる。また、ここは大韓帝国最後の皇太子・李垠(イ・ウン)の妃になった李方子(イ・パンジャ)=旧姓名:梨本宮方子(なしもとのみや まさこ)=が1989年まで生活した場所としても有名だ。

●後苑

 王族の休憩や散歩のための庭園である後苑は、美しい庭園として有名だ。昌徳宮後苑は自然を損なわずに地形をそのまま生かし、谷地ごとに人工的な庭園を作った。このため、芙蓉池・愛蓮池・観纜池・玉流川の計4カ所の谷地に庭園ができた。こうした庭園は、いずれも広く開放された空間から始まるが、奥まるほどひそかな場所へ、人工から自然へと変化していき、後方の山・鷹峰へとつながる。このうち、芙蓉池・愛蓮池・玉流川は一般に開放されており、その美しさが楽しめる。玉流川観覧コースは、一般観覧コースと違い回数が少ないのでご参考まで。

 芙蓉池は後苑の代表的な空間。第一中心庭園で休息を取ったほか、学問や教育も行われた場所だ。緑色の水をたたえた池、そのそばにある王室図書館「奎章閣」、王が立ち会う特別な科挙試験が行われた暎花堂、池に立つ芙蓉亭が周辺の古木と調和し、一枚の絵のような美しい風景を作り上げている。芙蓉池をよく見ると、きちんとした四角形になっており、その中央には小さく丸い島がある。これは朝鮮時代の世界観を表している。天は丸く、地は四角いということを意味する「天円地方」思想に由来しているそうだ。四角い地、つまり池にある水は王を象徴するとも。目が利く方は、池の隅に魚の彫刻があるのに気づくだろう。これは、臣下を象徴しており、王と臣下は切っても切れない関係であることを意味するという。



●不老門

 芙蓉池を経て、愛蓮池にある愛蓮亭へ向かう途中にある門。その名の通り、この門をくぐれば年を取らないといわれている。

●愛蓮池

 ハスが特に好きだった朝鮮時代第19代王粛宗がこの池にあるあずまやに「愛蓮亭」という名を付け、池の名も「愛蓮池」になった。愛蓮亭をよく見ると、柱と屋根の間に装飾が施されているが、かつては亭から池を眺めると、この装飾によりまるで額縁のように素晴らしい景色が鑑賞できたそうだ。

●観覧案内

 昌徳宮は韓国人客・外国人客とも、出入りできる時間やコースが決まっている。ガイドの案内に従い、この時間やコースに沿って観覧することができる。

●一般観覧コース(約2.1キロ、所要時間1時間20分)

敦化門-錦川橋-仁政門と仁政殿-宣政殿-煕政堂-大造殿-楽善斎(金・土・日)-誠正閣-芙蓉池付近-暎花堂-倚斗閤-不老門-愛蓮池付近-演慶堂(火・水)-敦化門

*観覧時間:3月16日-10月15日/9:30、10:30、12:30、14:30、16:30(1日5回)
10月16日-3月15日/9:30、10:30、12:30、14:30(1日4回)

*料金:3000ウォン

*休業日:毎週月曜日・木曜日

●特別観覧コース

1)玉流川観覧コース

敦化門-芙蓉池付近-愛蓮池付近-尊徳池付近-玉流川付近-敦化門

*観覧時間:4月-11月/10:00、13:00、14:00(1日3回)

*料金:5000ウォン

*休業日:毎週月曜日・木曜日

※10時スタートのコースは機械による日本語音声ガイドあり。

2)楽善斎観覧コース

敦化門-誠正閣-観物軒-楽善斎-錫福軒-寿康斎-翠雲亭-閒静堂-上凉亭-敦化門

*観覧時間:年中10:20、16:00(1日2回)

*休業日:毎週月曜日・木曜日

*料金:5000ウォン

*アクセス:地下鉄1・3・5号線鍾路3街駅6番出口から徒歩10分、地下鉄3号線安国駅3番出口

*お問い合わせ:02-762-8261,9513 www.cdg.go.kr

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