最近ちまたでは、「彼氏がほかの女性に目移りしそうになったら、『恋不』を見ろ」という言葉が若い女性の間で流行っている。『恋不』とは、ケーブルテレビチャンネル「オリーブ」で放送中の番組『恋愛不変の法則』の略だ。自分の恋人がどれだけ簡単に異性の誘惑に負けるのか、隠しカメラを仕掛けて確かめるリアリティー番組だ。
エロチックなシーンが多く、「やりすぎ」という批判もある。誘惑役の女性が男性のひざに座りキスをするなどは日常茶飯事。リアルな「摩擦音」もしっかりと入っている。誘惑に弱い男性が女性の手を引き、ラブホテルに入ることも。これらはすべて実際に起きたことだという。
女性団体「韓国女性民友会」のメディア運動本部は先日、この番組を「今月の悪い番組」に指定、「忍耐と許しは女性の特徴、性欲と浮気は男性の特徴とみなす前近代的な男女関係の幻想を広めている」と評した。しかし、多くの視聴者にとって、他人が不幸な目に遭うのを見て自分の幸せを確認するという「ひそかな楽しみ」になっているこの番組は、ケーブルテレビとしては成功といえる視聴率1%を記録し、勢いに乗っている。その上、1週間に8回も再放送されているため、世間一般に知られている地上波の番組も顔負けだ。
「やりすぎ」といわれる番組を制作するテレビ局や制作者側に対する非難はさておき、興味深いのは、テレビの中で自分の秘密の愛情行為や恥部をオープンにさらけ出す若者たちの心理だ。ちなみに、制作者の指示を受け、誘惑という任務を遂行するために起用される「ナンパ女」も一般の女性だ。競争率は10倍だという。
誘惑の技術も自らすすんで一生懸命磨きをかける。「日当」は30万ウォン(約2万円)。突然「ナンパ女」が登場すると疑われる可能性があるため、男性をうまくだますために制作スタッフがよく動員するのが友達。酒の席に同席し、仕掛け人になる。普通なら、「友情」を守ろうとスタッフのとんでもない要請を拒否するところだが、現実はそうではない。1回オファーしただけでOKするケースが90%だという。ただし、こうした仕掛け人役の友達に報酬は全くない。
だが、一番あきれるのは、「ナンパ女」に誘惑される男性たちだ。男性たちの相当数がテレビに素顔が出ることに対して抵抗を感じていない。なぜだろうか。「テレビに出るのを誇らしいと思っているから」というのが制作者側の結論だ。「これをチャンスにタレントになれるのでは?」という期待が心の奥底にあることも。自分をアピールできるのなら、恋愛も友情も体裁も捨ててしまえる世代の欲望が『恋不』のヒットの裏にあるのだ。視聴者の「のぞき」行為と、出演者の「露出」心理が合いまって、「やりすぎ」といわれる番組を支えているというわけだ。
では、誘惑の成功率はどれぐらいだろうか。100回を超える「実験」のうち、失敗したのは1回だけだという。つまり、成功率は99%以上。「インスタントな恋」をする世代と、そうした若者をさらして視聴率を稼いでいる番組の、何とも「ご立派な」成績表だ。