■酒造り職人と行くマッコリの進化
小麦粉を使った時代を経て、進化した韓国のマッコリ。その味の大きな特徴は、口当たりと清涼感(酸味・炭酸)だった。ところが、ソン専務はこの特徴を捨てた。専務はマッコリを低温・長期発酵により十分熟成させ、従来の問題点だった口当たりと、酸っぱくてゲップが出る点を解決したそうだ。発酵温度を下げて酸味をなくし、口当たりは材料の小麦粉を米に変え、軽くした。飲んだ後にゲップが出るのは、完全発酵により炭酸ガスの発生を抑えることで解決できた。
長寿マッコリは韓国のマッコリ消費市場でシェア30%以上を占めている。米90%を材料にしているので、口上がりが軽くソフト。イソマルトオリゴ糖が10%入っているので、甘みとサイダーのような味が感じられる。農村で飲まれていた口当たりの悪いマッコリは、都会の若者が好む軽い口当たりに生まれ変わった。
そんな専務だが、最近ろくに眠れないという。マッコリが売れすぎているからだ。というのも、麹1キロさえ貴重な状況とあって、せっせと製麹機を動かしているのに、ソウル東部に第7工場ができたのだ。だから、ソン専務は最近、ソウルの西にある製麹工場と、ソウルの東にある第7工場を行ったり来たりして大忙しだ。
ソン専務の趣味は山登りとマッコリを飲むこと。山登りとマッコリ、一見全く関係ないようだが、ソウルで一番有名な北漢山に登ってみれば、この二つがどれだけ関係深いか分かるだろう。山登りの後に飲む1杯のマッコリはのどの渇きも、疲れも癒してくれる。「韓国人は焼酎をよく飲む」と言われるが(韓国人のアルコール消費量の50%以上は焼酎が占める)、山のふもとではマッコリの方が断然人気だ。ハイキング客たちは「山登り後はマッコリが最高!」という。だから、ふもとの飲食店ではマッコリの空き瓶が山のように積まれている。ソン専務の山登りも、もしかしたら山ではなく、その空き瓶を見に行っているのかもしれない。
■マッコリのおいしい飲み方
1. 、加熱処理していない生マッコリは、出荷後1日以上冷蔵保管してから飲むのが一番。マッコリを作る際、原液のアルコール度数14度を下げるため水を混ぜるが、酵母が発酵し、水がアルコールに変わる時間が必要だからだ。
2. 、よく熟成させたマッコリを飲むなら上下によく振ること。ビンの下に沈んでいる成分こそ抗がん作用がある物質が含まれている生酵母の濃縮されたものだ。
3. マッコリを買う時、濁っていて、沈殿物があまりなければ、きちんと熟成していないものということになる。
4. マッコリなら取りあえず冷やして飲めばいいというものではない。冷蔵庫に保管してから飲むのが一般だが、長く入れて置いたからといっておいしくなるわけではないので、1-2日、長くても1週間以内に飲んだほうがいい。
5. マッコリのつまみは、シンプルなほどよく合う。キムチでも、チゲでもいいが、ネギチヂミのように油を敷いて焼いた料理なら腹持ちもいい。香ばしい油とマッコリ独特の味や香りは相性ピッタリだ。
文=ホ・シミョン(旅行紀行家・酒評論家)、写真=キム・ソナ