文化観光部が最近、「自然近代産業遺産を活用した文化芸術創作ベルト造成」のテスト事業の対象地域5カ所を発表した。活用されていない産業施設を文化空間として再利用するということだ。鉄道の駅舎を改造したパリのオルセー美術館が先進国の例だ。必要なくなったからといって撤去するのではなく、直して保存するという意識が広がっているようでうれしくなる。産業遺産から文化に生まれ変わる「抱川アートバレー」を紹介する。
天に向かってそびえ立つ巨大な絶壁が、ひょうたんのような形をしたエメラルド色の湖を囲んでいる。絶壁には緑、赤、茶色の模様がてっぺんから流れ落ちる水流のように見える。まるで巨大な抽象画のようだ。しかしよく見てみるとどこか人工的だ。大きな四角形が秩序正しく描かれていたり、穴が開いていたり、ペンキで落書きされた跡も見える。
抱川市文化体育課のクォン・ヒョングァン課長はこれについて、「石を掘り出した跡だ」と説明する。「大きな穴はダイナマイトを入れた発破孔です。足場を作るために作った穴もあります。ペンキの跡はどこまで石を取り出すかを表示したものです。絶壁の表面にある黒い模様のように見えるものは、石を切り取った断面からにじみ出てきた鉄分などの跡です」
ここが「抱川アートバレー」。京義道抱川市新北面機池里の山の中腹にあった採石場を文化芸術空間にしている最中で、10月に正式にオープンする予定だ。
抱川は花こう岩の質のよいことで有名なところだ。1960年代から半世紀の間、ここで掘られた花こう岩で数多くのマンションが建ち、道路ができた。しかし、全国で建物が建設され、道路が拡張されていくにつれ、抱川は荒廃していった。アートバレーの高い絶壁は、本当は石を掘られた岩山の傷と言えるかもしれない。
上質の石が減るにつれ、石を掘っていた会社は採石場を離れていった。そして90年代後半に廃石山となった。抱川市はこの傷をどのように治癒すればいいか悩んだ。クォン課長は「採石場の管理を務める緑地課があるアイデアを出しました。どうせ100%復旧は不可能なのだから、グランドキャニオンや岩に顔を彫るといったような『岩刻画(岩絵)』を導入してはどうかというものでした。それで採石場に行ってみたところ、石を掘った場所に雨水がたまって湖のようになっていたのです。とても美しく、公園を作る方向に話が発展していきました」
雨水がたまった湖に渓谷の水を流し、面積7040平方メートル、深さ20メートルの湖を作った。湖のほとりには展望デッキを、絶壁の下には公演用のステージを設置した。教育展示センターなどの建物3棟を建て、イベント広場と道路も完成させた。
「どこにもない独特な風光」といううわさが広がるにつれ、既に多くの人たちがアートバレーを訪れている。しかしアートバレーの人気が定着するためには、この地ならではのコンテンツが必要だ。現在の神秘的な雰囲気がなくなり、どこにでもあるような場所に転落してしまう可能性もある。「今月中にこの空間を総括する専門家を選ぶ予定です。観覧をインターネットだけで受け付ける方法も検討中です」
まだ未完成のアートバレーがどのように発展していくのか期待される。