BoAの「アメリカンドリーム」と韓国音楽市場の陰

 127位。歌手BoAの全米デビューアルバム「BoA」が、リリース第1週目にビルボードチャートで収めた成績だ。最近、同チャートでトップに輝いているアルバムの週間販売量が10万-30万枚という事実から推定すると、BoAのアルバムは約1万枚売れたと予想できる。悪くない成績だ。しかしアルバムの販売量よりも重要なのは、曲のヒットの行方だ。広大な米国全域のラジオでBoAの曲「I Did It For Love」が流れるとき、この22歳の歌手の「ポップスター」への挑戦はやっと軌道に乗ったことになる。大型の女性歌手が力を失い、エレクトロニックサウンドや華やかなダンス、衣装で攻め込むプロジェクト型の女性歌手が人気を集めている米国市場で、BoAの躍進は期待に値する。

 米国市場に挑戦している韓国人歌手はBoAだけではない。SE7ENも先月10日に全米デビュー曲「Girls」をリリースし、活動を開始した。Rain(ピ)も今年下半期、米国でデビューアルバムをリリースする予定だ。ワンダーガールズも最近、米国でコンサートを開催した。このところ、各芸能プロダクションは所属歌手たちの米国進出の可能性を見極めるのに忙しい。

 一見、心が弾むニュースだ。しかし突然始まった韓国大衆音楽界の「アメリカンドリーム」がどこか悲しく思えるのはどうしてだろうか。ある大型芸能プロダクションの幹部はこのように説明する。「今はアイドルグループが絶大な人気を誇っているが、会社としては収益が出ない。BIG BANGやワンダーガールズ、少女時代が皆同じプロダクションに所属しているならともかく…。内需が十分ならば無理して米国まで進出しようとするはずがない」

 すなわち、韓国の音楽市場が構造的に収益の出ない「ゼロサム・ゲーム(一方で利益が出れば、もう一方で損失が増えること)」の場であるため、米国進出という冒険をしているというわけだ。間違った意見ではない。韓国はまだ音楽の違法コピーがはんらんしている。2007年度の違法音源市場の規模は4300億ウォン(現在のレートで約320億円、以下同じ)台で、合法市場の4700億ウォン(約360億円)と同じ水準だ。そうした中、音楽市場の規模は2000年度の4104億ウォン(約310億円)から07年には788億ウォン(約60億円)に急減した。その代わり、インターネットやモバイル音源市場の規模は07年に4276億ウォン(約330億円)に成長したが、移動通信会社などの取り分などを引けば、音楽を作る人々の手に残るものはほとんどない。文化コンテンツ振興院によると、モバイルを利用した音楽販売の場合、韓国では制作会社の手に渡る金額の比率が販売額全体の25%に過ぎない。しかし日本は30-45%、米国は50-55%に及ぶ。

 まず変化が求められるのは人々の認識だ。先進国では「音楽はどんな経路を通じてでも、お金を払って購入して聞くもの」という概念が強く定着している。米国で有料音楽ダウンロードサイト「itunes」が、MP3プレイヤー「ipod」とともに音楽市場の必須要素として定着できた理由もここにある。

 韓国の歌手や俳優たちが求めているのは素朴なことだ。音楽鑑賞に対する正当な代価。人々が今後もこの当然の市場原理を拒否するならば、韓国の歌謡曲をすべて英語や日本語で聞かなければならない日が来るかもしれない。収益のない市場で「無駄骨」を折るよりも、成功してもしなくても「大海」に出て行きたいと願うはずだからだ。BoAの米国進出の裏には、韓国音楽市場の暗い影が隠れている。

チェ・スンヒョン記者
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