親子3代が通う韓国料理店「韓一館」

 昔、祖父や父と一緒に通った食堂に、自分の子どもや孫を連れて行けるのは幸せなことだ。「韓一館」はそんな素朴な幸せを顧客に提供してきた店だ。1939年にソウル市鍾路区にオープンして以来、大統領から平凡な庶民まで、代々訪れた韓国料理店だった。

 そんな韓一館が同区清進洞の再開発の影響を受け、鍾路から姿を消した。そして今年1月、江南区新沙洞に押鴎亭店をオープンした。鐘閣本店は清進洞の再開発が終わる3-4年後に再オープンする予定だという。今回は、新たにオープンした韓一館押鴎亭店を紹介しよう。

 古くからの常連たちは、花崗岩でできた薄いグレーの5階建てのビルを見て、「モダン過ぎる」とやや不満の声をもらしている。シンプルですっきりとした店内と、木目調を生かしたテーブルやイスは、韓国料理店なのかモダンな日本料理店なのか区別がつかないほどだ。

 だが幸い、料理の味は変わっていない。甘めの味付けのプルコギ(韓国式焼き肉)をドーム型の鉄板で焼き、鉄板の脇にたまったスープに韓国春雨を入れて食べると、子どものころ食べたプルコギの味を思い出す。しっかりと下ごしらえされた味付けはソウル風のさっぱり味。カルビタン(牛のカルビを煮込んだスープ)やユッケジャン(牛肉と各種野菜を煮込んだ辛いスープ)、マンドゥタン(韓国式ギョーザのスープ)は、「これこそ料理本来の味」という標準を示しているかのようだ。

 味はそのままだが、料理の出し方は時代に合わせて変化してきた。スープ類には耐熱皿が使われ、熱々のまま食べることができるだけでなく、見た目においても品がある。ビビンバはよくある石焼鍋ではなく、温めた陶磁器を使っている。細長い皿に9種の具を並べた九折坂(9種類のおかずをクレープのような生地に包んで食べる料理)は、韓国伝統料理を新しい感覚で楽しめる。


 一緒に食事をする人が皆同じメニューを頼まなければならなかったり、一人ではコース料理や肉料理を食べられない、といった韓国料理の非合理的な慣行をなくそうとする努力が感じられる。ランチメニューや焼き肉類も、一人前ずつ注文することができ、コース料理のうち肉料理を好きな料理に変えて注文することもできる。一品メニューは量を減らして値段も下げ、団体でなくても何品かの料理を味わうことができるようにした。

 しかし惜しい点がないわけではない。それは、メインのメニューよりおかず類にある。 まず、九折坂の卵とエビが乾いている。事前に食材を準備する大型料理店の限界だ。リンゴ・マヨネーズ・サラダのように国籍不明の料理を韓国伝統料理のコースで出すべきなのか。冷めんのスープは平壌式なのに、麺はでん粉が多い固めの咸興式。どちらか一方に統一してほしいものだ。スープも深みがなく水っぽい。タコ炒めはピリッとした辛さではなく、コチュジャンの味が強過ぎて、トッポッキ(韓国のもち炒め)のような味だ。

 この店で経歴10年は軽く超えると思われるベテラン従業員たちは、サービスの基本が体の芯まで染み込んでいる。韓一館を支える骨組みのような存在だ。数十年間勤務してきた料理人や従業員が、若い後輩たちの足りない部分を補っている。このような人たちがいるからこそ、リニューアルした韓一館にあまり違和感を感じないのかもしれない。

 今後もさらなる発展に向けた挑戦は続けてほしいが、子どもたちが大人になっても食べに来て、つかの間の幸福を味わえる、そんな料理店であってほしいと願う。

■飲食評論家・食探(ペンネーム)▶韓一館:★★★★(★五つが満点=味・値段・雰囲気・サービスの総点)住所:ソウル江南区新沙洞619-4(聖水大橋南端ホサン病院裏、シング中学校裏門横)▶ウェブサイト:www.hanilkwan.co.kr営業時間:午前11時30分-午後9時30分、年中無休▶メニュー:ランチコース2万5000ウォン(約1560円)、プルコギコース3万5000ウォン(約2328円)、カルビコース4万5000ウォン(約2930円)、デラックスコース・東4万2000ウォン(約2730円)、西4万9000ウォン(約3190円)、南5万9000ウォン(約3840円)、北6万5000ウォン(約4230円)、カルビタン1万3000ウォン(約845円)、ユッケジャン9000ウォン(約590円)、マンドゥタン8000ウォン(約520円)▶駐車場:駐車代行サービス可

ユ・チャンウ記者
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