故チャン・ジャヨンさんの文書をめぐる五つのミステリー

 チャン・ジャヨンさんはどうして自殺したのか。暴行を受けていたという文書はなぜ書かれ、どのような経緯で公開されたのか。文書の内容はどこまで事実なのか。

 チャン・ジャヨンさんが書いたと推定される文書をKBSが公開した後、警察の捜査が本格化している。しかし、この文書と関連のある利害当事者の間で激しい攻防が繰り広げられており、沈黙していた遺族側がメディアのインタビューに応じたことで、推測と疑惑はさらに膨れ上がっている。

 チャン・ジャヨンさん事件の中心的な争点は、文書の真偽のほど。元マネージャーのユさんは事件の直後、ミニホームページで「自殺する2週間前から、ジャヨンが何度も僕のところに来て、二人で解決策について話し合っていた。そのときに、ジャヨンが自ら書いた文書6枚を僕に手渡した」と話したが、日本に滞在中の現マネージャー、キム某さんは「法廷で攻防を繰り広げているユさんの完ぺきな一人芝居」と、これを全面的に否認した。警察はチャン・ジャヨンさんがこの文書を作成したのかどうかが捜査のカギになるとみて、国立科学捜査研究所に文書の筆跡鑑定を依頼した。

 チャン・ジャヨンさんが自らこの文書を作成したとすれば、この文書がどんな目的で作成されたのかも疑問の一つだ。元マネージャーのユさんは、チャン・ジャヨンさんが訪ねてきて助けを求められたと主張しているが、遺族側は某メディアとのインタビューで、「ユさんが『俺の言う通りにさえすれば契約を解除し、責任を持って保護する』と言われ、これまでキムさんに苦しめられたという内容の文書を書き、母印を押すよう強要されたと聞いている。文書の内容がすべて事実だと信じることはできない」とした。この文書をチャン・ジャヨンさんの遺書と見るべきなのか、所属事務所の移籍や法廷攻防のための内容証明用と見るべきなのかについても、警察が捜査で明らかにしなければならない部分だ。

 文書が明らかにされた経緯にも、さまざまな憶測が持ち上がっている。KBSがどのような経緯でこの文書を入手したのか、どうして燃えた跡があるのかもミステリーだ。ユさんと遺族はソウル江南の某所で原本とそのコピーが燃やされ、灰になるのを見たと話している。KBSの報道後、遺族は「コピーが別にあったということ」としており、ユさんはショックのために入院している状態だ。

 本物が計何枚あるのかについても、はっきりしたことが分かっていない。警察がKBSを通じて入手したチャン・ジャヨンさんの文書は計4枚。しかしユさんはこの文書について「自分が持っていた文書ではない」と話している。ユさんはチャン・ジャヨンさんが自殺した直後、4枚の文書があったと話していたが、途中で6枚だったとし、最終的には12枚に訂正したとされている。最近、芸能界の一角ではこの文書は計16枚だという話も出ている。警察が入手した4枚に対する筆跡鑑定は国立科学捜査研究所に依頼済みだが、文書がさらにある可能性も考慮し、警察はほかの文書の存在についても捜査する予定だ。

 警察は文書の中に各界の有力者の実名が記載されていると発表したが、この文書の内容がどこまで真実なのかも重要なポイントだ。芸能界の内外では、「芸能界が以前より透明になったとはいえ、今でも裏の世界はある」という見方と、「今のような時代にこんなことがあるなんて信じられない」という意見が交差している。現在のマネージャーのキムさんは徹底して否定しているが、チャン・ジャヨンさんがこの世にいない状態でこれを立証するのは容易なことではないだろう。

 チャン・ジャヨンさんが文書を作成してから自殺するまでにどんなことがあったのかについても、疑問点が多い。昨年末からうつ病の症状が回復していたチャン・ジャヨンさんが、文書作成後から目に見えて病状が悪化したという遺族の言葉と照らし合わせてみると、その時期にチャン・ジャヨンさんの心境に大きな変化をもたらすだけの事件があった可能性もある。事故当日、家族と済州島に旅行に出かける予定だったチャン・ジャヨンさんは、「一休みする」という内容の携帯メールを送り、それから1時間もたたないうちに自殺したとされている。

 一方、京義道盆唐警察署は15日、遺族に対し7時間にわたり事情聴取を行い、16日には文書の筆跡鑑定のほか、故人とその関係者の携帯電話の通話記録の分析を行った。

チョン・ギョンヒ記者
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