インタビュー:シン・ヒョンジュン、いい人から悪役へ

『カインとアベル』でイメージチェンジ

 ボサボサ頭に歯茎をむき出しにしてカラカラと笑っていた「ギボン」がこうも変わるとは。SBSドラマ『カインとアベル』に出演中のシン・ヒョンジュン(41)。映画『大変な結婚2』(2005年)、『裸足のギボン』(06年)などの話題作やバラエティー番組ではコミカルなキャラクター見せ、それまでのイメージをいい意味で裏切ってきたが、このドラマでは「ファン将軍」のアクの強さを取り戻した。劣等感にさいなまれ、腹違いの弟を窮地に追い込み、父親さえも植物人間にする天才神経外科医のイ・ソヌ役。説得力ある悪人を生み出す演技力に称賛の声が相次いでいる。



 「第10話まで進めば、僕のコミカルなイメージは皆さんの記憶の中からすっかり消えるでしょう(笑)」。シン・ヒョンジュンは自信ありげに笑い飛ばした。

 「映画『銀杏(いちょう)のベッド』(1996年)に出た時のことを思い出します。あの時、カン・ジェギュ監督は“寂しげで奇怪な役柄だが、結局観客を泣かせるのは、ファン将軍なんだ”と言ったんです。イ・ソヌ役も同じです。一見悪役ですが、結局は誰もが共感できる人物になるでしょう」

 先月26日に放送で、脳腫瘍(しゅよう)を抱えているソヌが発作を起こすシーンの演技は圧巻だった。

 「実際にこの病を抱えている方々がどれだけつらいか、きちんと表現しなければならないので、準備には慎重を期しました」

 シン・ヒョンジュンはもともと楽しく明るい人だ。バラエティー番組では後先かまわずしゃべるため、ときどきハプニングがあることを見ても分かる。

 「シリアスな映画で悲壮さを前面に押し出して演じた後でも、出演オファーが来る映画10本のうち8本はコメディーでした。スタッフたちは撮影現場の僕の姿を知っていますから」

 『裸足のギボン』は大冒険だった。シン・ヒョンジュンはドキュメンタリー番組『人間劇場』(KBS)で紹介された知的障害のあるマラソンランナー、オム・ギボンさんのけなげな親孝行を見て感動し、自ら企画したものの、はじめは投資をしてもらえなかった。

 「“ちょっとは笑わせられるかもしれないが、あのシン・ヒョンジュンがどうやって知的障害者を演じるんだ?”という偏見の壁が高くて…。でも、困難を乗り越え公開にこぎ着けたところ、300万人以上を動員し、ヒットしました。“40歳になったら自分の顔に責任を持て”とよく言われますが、僕はあの映画のおかげで顔にいいシワを刻むことができました。試写会に来たある子供が泣いていたので、“どうしたの?”と聞いたら、“これからお母さんに親孝行します”って。ジーンとしました」

 シン・ヒョンジュンがチョン・ジュノやタク・チェフンと親友であることは有名。タク・チェフンはシン・ヒョンジュンのおかげで映画に出演できた。「チェフンはデュオ“カントリーココ”時代から映画に出演させてほしいって言っていたけれども、ちょうどいい役がなかった。『大変な結婚2』 のときに推薦したら、監督に反対されてしまって。“じゃあ僕が降りてもいいですか”って食い下がったら共演できました」

 「撮影現場で休憩時間に一番夢中なのはお茶のブレンド」というシン・ヒョンジュンは、健康にも気を使っている。「一時期は12種類のお茶をブレンドして飲んでいたけれども、今は3種類で満足」だそうだ。

 そんなシン・ヒョンジュンも、かつては「スキャンダルの帝王」と呼ばれていた。だが、それにはキッパリと反論する。

 「しばらく、僕が映画の出演以外に露出を避けたときがあったでしょう。そんなとき、しょっちゅうスキャンダルが流れたんです。気軽に食事などをしてきた女優さんたちとご飯を食べに行っても、周りの人たちに変な目で見られて…。でも、いろいろなバラエティー番組で僕の本当の姿が紹介されたからか、最近はそういう話もないでしょう? 以前の三角関係のうわさは本当にあきれたものでした。本当にそんなことはなかったし。焼酎を飲みながら一晩中話しても語り尽くせないでしょう。

今は僕が好きな後輩の奥さんになったあの女性…、二人が仲良く幸せに暮らしてくれたらと思います」

チェ・スンヒョン記者
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