「わたしには夢があります。その夢を信じます。わたしを見守ってください」(歌手インスニのヒット曲『ガチョウの夢』より)
まさに「キム・ヨナ熱」だ。18歳のか細い少女が大韓民国に向かって叫ぶ希望のメッセージが全国民の胸に響いた。昨年のドラマ『ベートーベン・ウイルス』の主役カン・マエ(キム・ミョンミン)が『ガチョウの夢』を通じ希望を語ったように、アジア通貨危機直後の1998年、朴セリ(パク・セリ)が素足になり全米女子オープンで優勝をたたき出したように、キム・ヨナ自身もCMで『ガチョウの夢』を歌い、「希望と自己肯定感のウイルス」を全国に広めている。
7日、表彰台の一番高い場所で金メダルを首にかけたキム・ヨナの姿を目にした韓国国民は、共に愛国歌(国歌)を歌い、自信について語り、希望を信じた。
◆キム・ヨナ特需
あちこちで目にするキム・ヨナ特需は、今や一種のシンドロームだ。SBSは生中継の間、始終高視聴率をキープした。金メダルを首にかけた7日の視聴率は19.5%(TNSメディアコリア調べ)で、芸能・スポーツ番組の中では1位だ。
ポータルサイト「ネイバー」の人物検索語1位も当然キム・ヨナ。公式ホームページや彼女自身のミニホームページ(ブログ)にはファンからのお祝いメッセージがあふれた。
キム・ヨナをCMに出演させている企業はホクホク顔だ。今シーズンの大活躍で売り上げが確実に伸びているためだ。伝説の「CMの女王」チョン・ジヒョン、イ・ヨンエ、キム・テヒらを退け、12本のCMに登場しているスター性に実力と感動まで加われば、非難の声などみじんもない。試合で使用した曲やプライベートで好きな曲をまとめたクラシックのコンピレーションアルバムも人気が爆発。キム・ヨナの出場が確実とみられる来年のバンクーバー冬季オリンピックのフィギュアスケート試合表は早々に底をついたという話もある。
フィギュアスケートとは縁のなかった韓国人の口から「ダブルアクセル」「トリプルアクセル」「スパイラル」「スピン」などという用語が出るようになったのも、キム・ヨナ熱の現れだ。
◆希望と自己肯定感広める「ウイルス」
キム・ヨナがトップスターを通り越し、「スーパースター」になったのは、彼女にスター性や実力があるからだけではなく、「人々を感動させる何か」を持っているからだ。試合中に見せる冷静ながらも堂々とした演技は、いつも「感動そのもの」だ。さらにすばらしいのは、大きなミスを犯したとしても、後悔したり残念がったりせずにベストを尽くし、次はもっとうまくできると話す「自己肯定」の姿勢だ。
流ちょうな英語は、子供たちや若者に英語を学ぶ必要性を示している。正式なインタビューの場を通訳なしでこなす姿は、キム・ヨナがフィギュア以外にもさまざまな分野でトップを目指し努力していることを証明している。
「誰も信じてくれませんでした。トップに立ちたいという夢を、みんなあざ笑いました。信じられるのは自分だけでした。でも、自信が恐怖心を押しのけてくれました。世界はもう、高い壁ではありません。“最高”はわたしたちの中にあります」
出演CMのセリフのように、彼女がまいてくれた「希望と自己肯定感のウイルス」により、すべての韓国人が「キム・ヨナ熱」にうなされている。