『マイ・ボス・マイ・ヒーロー』 『大変な結婚』などで500万人以上の観客を動員したチョン・ジュノ。コメディー映画がヒットしたものの、実際に会うと、コメディー俳優というイメージはほとんどない。チョン・ジュノと聞いて頭に思い浮かぶのは「俳優」「実業家」「政治家」という言葉だ。ホテル経営を行う経営者であり、また途絶えることのない政界進出への挑戦に関するうわさのためだ。
チョン・ジュノはこうした人気の理由について、「敵をも味方にできる包容力」を第一に上げる。断固とした側面がありながら強情ではない。その一方で優しくて包容力に満ちた目の輝きは、誰でも受け入れることのできるチョン・ジュノの感情的な側面を感じさせる。
「一人の敵が10人の敵を生み出すかもしれない。忍耐をもって自分の味方にしなければならない。いつか自分の本心が伝われば、味方になってくれると信じている」とチョン・ジュノは強調する。
劉邦が無敵の項羽を退けて中国の統一を実現できたのは、高い人徳と幅広い包容力があったからだという。神は人間に目と耳を二つずつ与えたが、口は一つしか与えなかった。見て聞くことは話すことよりも2倍重要という意味だ。
チョン・ジュノは今回、映画『遺憾な都市』の制作と主演を担当した。もちろんコメディーだ。チョン・ジュノはコメディーを選ぶ理由について、「投資家への配慮」と説明する。チョン・ジュノに会って対人関係の秘訣を聞いた。
-『遺憾な都市』は制作も引き受けたそうだが。
「チュモニ・エンターテインメント設立後は、キム・ドンホ監督と協力して事務所を引っ張ってきた。キム監督は『マイ・ボス・マイ・ヒーロー2』に続いて2作目、チュモニ・エンターテインメントとしては3作目だ。『マイ・ボス・マイ・ヒーロー』シリーズに出演した俳優が作品を作るという点にプレッシャーはあった。『マイ・ボス・マイ・ヒーロー2』以来3年ぶりだ」
-『遺憾な都市』にはチョン・トリオが出演する。この点で『マイ・ボス・マイ・ヒーロー』の影響がありそうだ。
「アンケート調査をしてみると、チョン・トリオ(チョン・ジュノ、チョン・ウンイン、チョン・ウンテク)にはもう飽きたという声もあった。しかし多くの人は久しぶりの作品ということで期待してくれている。不景気のせいかもしれないが、ただ何も考えず笑える作品が待ち望まれているようだ。観客にとっては期待できる映画だと思う」
-「暴力団コメディー」ではないそうだが、なぜそう考えるのか。
「この映画は“暴力団コメディー”ではない。警察を取り上げた映画だ。巨大な暴力団組織を壊滅させるために、交通係の警察官だったチャン・チュンドンを派遣するという内容だ。これまで韓国で暴力団を取り上げた映画の中に登場したような、いかにも知識や品のない組員の姿を表現した部分も数カ所は登場する。しかし今回は『マイ・ボス・マイ・ヒーロー』に登場したのとは違い、組員にも知的な雰囲気を漂わせた。
罵詈雑言、暴力、凶器使用の場面も、ストーリーに沿って構成されている。チョン・ウンインとハン・ゴウンの恋愛などもストーリー性を持って展開される。大作クラスのアクション場面もある。全体的にはコメディーだが、しっかりとしたストーリーもあると断言できる。ヘリコプターによる追撃シーンの撮影には、国会議員の先生や自治体にも直接支援を要請した」
-「暴力団コメディー」がさげすまれてきたのは、ストーリーの構造的な問題といわれている。素材は変わっても、ストーリーの流れはあまり変わらないということだ。観客から「もう飽きた」と言われるのもそのためでは。
「この映画はまさに衝撃的だ。犯人については誰も分からない。スリルとコメディーをうまく調和させている。面白い側面もあるが、次にどうなるかも気になるだろう。
チョン・トリオが登場して騒動を巻き起こすだけの映画にだけはしたくなかった」