グルメたちは、涼しい気候の中で生まれ育った家畜はストレスが少なく、そのため肉質もいいと口をそろえる。納得のいく分析だ。江原道太白は海抜が平均800メートルを超える高原地帯だが、この地方の牛肉の味には定評がある。
太白の人たちは同地域の牛肉について、韓牛ブランドの代名詞とされる「横城韓牛」に負けないと強調する。太白の食堂で会った市民の言葉にも、太白韓牛に対する誇りが感じられた。
「太白の韓牛は横城に負けないのに、太白で韓牛を食べると『おいしかった』と言い、横城で食べると『ごちそうになった』と言うなんて…まったく納得がいかない」
太白の韓牛料理はほかとは少し違う。練炭を使って肉を焼くからだ。太白はもともと無煙炭の産地で、練炭が多い。特に練炭は炭に比べ火力が一定のため、同じ焼き具合で肉を食べることができるという長所がある。太白のグルメたちは練炭焼き肉のおいしい店として、江原観光大学前にある「太白韓牛コル」を推薦した。
この店のメーン料理は練炭で焼く韓牛のカルビ。適度な霜降りの厚めのカルビを練炭で焼いて食べるというもので、たっぷりの肉汁が逸品だ。太白の高冷地で育てた黄牛(3歳)の肉を使っているが、軟らかく適度な歯ごたえがある。
15年にわたり食堂を運営しているというパク・ヨンスク社長(46)は、「肉は歯ごたえがなければおいしくない。 去勢牛の肉は軟らかいけれど、味が劣るため、黄牛を使うようにしている」と説明した。
この店のおいしさの秘訣(ひけつ)は、最高の材料を使っているのはもちろん、3日間低温(0-1度)で熟成させ、肉の味をまろやかにしているためだという。この店では部屋で練炭焼きを食べることができる。炭を使うと管理はしやすいが、味はもちろんのこと、旧炭鉱村の雰囲気を生かすためにも練炭焼きにこだわっているという。
「炭は温度が一定じゃない。火の勢いが弱くなると肉が乾いてしまうため、おいしくなくなる。着火炭は健康に悪いし…だから練炭を使う」
しかし、練炭を使うとガスも一緒に吸ってしまうのではないかと心配になる。しかしこの店は「まったく心配することはない」と強調する。練炭の表面と中が燃え尽きた白い状態で、中央の火種だけを残して使っているからだという。
「1日70個(1個当たり370ウォン=約24円)を使う。練炭はうちの主人がすべて管理していて、しっかり燃えて白くなる前のものは使っていない」
KORAIL(韓国鉄道公社)が運営する観光列車「ヘラン」指定の飲食店でもあるこの店のもう一つの名物は、テンジャンチゲ(韓国風みそ汁)。手作りのみそを使っており、普通より味がソフトで、舌を柔らかく包むような後味がある。この味には秘訣がある。手作りのみそに大根とチョングッチャン(蒸した大豆を発酵させた味みその一種)などを交ぜ、約2時間寝かせたものを使用しているのだ。
「わたしが食べてもおいしい(笑)。テンジャンチゲには自信がある」
白菜の浅漬けキムチ、水キムチ、唐辛子の漬物、ニラのあえもの、卵焼きなど8種のおかずも美味。韓牛カルビ2万1000ウォン(約1400円)=一人前200グラム=、ご飯1000ウォン(約65円)=テンジャンチゲ付き=。
平日は地元の人たちで、週末は観光客でにぎわう。営業時間は午前10時30分から午後10時30分まで。旧正月、旧盆は休み。