チュ・ジンモは知っていた。自分がA級俳優ではないことを、そのためこれまでA級のシナリオを手にできなかったことを。
いつも最高になることを夢見てきたが、現実は厳しかった。チュ・ジンモは実際、韓国映画界でA級俳優とはいえなかった。もちろん、それを認めることは難しく、プライドが傷つくことでもあるが、チュ・ジンモはそんな現実を受け入れた。そして初心を忘れず出演した映画が、2006年末に公開された『カンナさん大成功です!』だ。
チュ・ジンモはこの作品で全身を美容整形した主人公(キム・アジュン)をトップ歌手に育てるプロデューサー役を演じた。男性主人公ではあったが、キム・アジュンに比べ比重は低かった。しかしチュ・ジンモは配役の比重より、役割に焦点を当てるべきだと思った。キム・アジュンがクローズアップされればされるほど、自分を抑え、映画のバランスを調節した。
『カンナさん大成功です!』が公開された後も、キム・アジュンばかりがスポットライトを浴びた。主人公が全身を美容整形し、デブでもてない女性から美女に変身する過程が同作の主な内容だったことを考えれば当然の結果だった。しかしこの作品の評判が口コミで広がり始めると、チュ・ジンモに対する注目度も一緒にアップし始めた。
ぶっきらぼうで仕事にも厳しいが、心温かく好きな人には弱いというキャラクターが、女性客の心を揺さぶったからだ。結局、この作品が661万人の観客を集めるほど大ヒットを記録すると、チュ・ジンモに対する韓国映画界の視線は違ってきた。チュ・ジンモの演技力とスター性を見直す動きが出てきたのだ。
◆10年間待ち続けたA級のシナリオ『霜花店』
映画『霜花店』の台本は、業界では制作初期からA級とされていた。『卑劣な通り』や『マルチュク通り残酷史』などで認められたユ・ハ監督の新作であるという点と、監督が直接シナリオを書いたということ自体が既に話題だった。元の支配を受けた高麗の王が、元の国から嫁いできた王妃を愛すことができず、自分の護衛武士と恋に落ちるという設定も衝撃的だった。
「『霜花店』制作の話を聞いて、正直、欲が出ました。俳優なら誰でもそう思うでしょう。ユ・ハ監督の作品である上に、シナリオも素晴らしかったのだから」
それが2007年秋ごろのことだ。チュ・ジンモは当時、クァク・キョンテク監督の『愛』で旧盆連休に200万人の観客を集め、『カンナさん大成功です!』に続き、韓国映画界の主演級俳優として認められつつあった。そして『霜花店』のシナリオは、ユ・ハ監督のペルソナとして注目されていたチョ・インソンとともに、チュ・ジンモのもとに最初に届いた。チュ・ジンモはこの作品により、韓国映画のA級シナリオを最初に受け取ることのできる俳優になったのだ。
「『霜花店』のシナリオを受け取って、言葉では言い表せないほどうれかったです。作品の中で争いの中心となる王の役を僕にくれたということを知り、自分もある程度は認められたのだなと思い満足でした。正直、10年以上俳優をしてきましたが、僕は誰もが認めてくれるA級スターではありませんでしたから。少なくともこの作品以前までは」