今年のイチオシ女優パク・ボヨン

 映画『スピード・スキャンダル』のヒロイン、パク・ボヨン(19)が封切り初日の昨年12月3日に映画を見に行ったとき、映画館にいた観客はたった5人だった。ところが、公開から1カ月たった今、この映画は観客500万人突破を目前にしている。映画を見た人々は言う。「パク・ボヨンは演技がうまい」。観客は新たな期待の星の登場に歓喜した。最近、映画関係者はパク・ボヨンに「あなたが“忠武洞のブルーチップ(=映画界の期待株)?”」と話しかける。そのたび、パク・ボヨンは「わたし、漢南洞のポテトチップです」と笑ってごまかす。漢南洞は彼女の所属事務所があるところだ。

 そうだ。パク・ボヨンは韓国映画界が昨年収穫した新進女優であると同時に、最高の期待の星なのだ。

◆パク・ボヨンにカンヌ女優チョン・ドヨンを見た


 一見、どこにでもいる平凡な少女に過ぎない。まだ背が伸びる年ごろとはいえ、身長1メートル58センチに細い体、どちらかというとのっぺりとした顔が注目の的になるとは思えない。「わたしの顔を見た人は“一般人オーラだね(平凡に見えるという意味)”っていうんですよ。“もっときれいになったら、そんなこと言われなくなるかな”って悩んだこともあります」。だが、「一般人オーラ」が彼女の武器になった。平凡だからこそ非凡な女優チョン・ドヨンとルックスも体形も似ている。真っ白な画用紙のような顔は、無限に変わる可能性を持っている。チョン・ドヨンほどの愛嬌(あいきょう)はまだないが、鼻にかかった声もよく似ている。

 万年脇役から映画界を代表する演技派女優に変身したチョン・ドヨンのように、「少女」パク・ボヨンはいつの間にか「大人の女性」と認められるようになった。SBSドラマ『魔女ユヒ』(2007)ではハン・ガインの少女時代を、『王と私』ではク・ヘソンの少女時代を演じ、ちょっと前まで「小学生」というあだ名で呼ばれていた。だが、映画『うちの学校ET』ではちゃっかりとした優等生、今回の『スピード・スキャンダル』では実年齢より年上の22歳の未婚の母役をタフに演じ、高く評価される。『王と私』では堂々とし気品があるイメージだったが、『スピード・スキャンダル』ではよれよれの服で食堂の仕事が天職のように見えた。息子のギドン(ワン・ソクヒョン)とはぐれ、はだしであちこち走り回る「マスカラ黒涙」シーンは、本当の母親のような印象を与えた。「人形のようにかわいいだけだったら、“あの子はそういうカラー”と決めつけられるかもしれないでしょ。役柄も限られちゃうし。かわいくないのも、こんな風に長所になるんですね」。

◆エリート軍人の娘、あこがれはペ・ジョンオク

 初めは「マネキン役」だった。中学生のときに学校の廊下を歩いていると、3年生の先輩が彼女を呼び止めた。中1の時のことだ。先輩は映画映像クラブで、マネキンを買うお金がないから小さな子を探しているといった。そして、「合格!」といわれて何も分からないままハマってしまった。「演技」というものに。

 中3の時、ソウル国際青少年映画祭に出品した作品が「現実挑戦賞」をもらった。そして偶然なのか、パク・ボヨンは現実に挑戦する瞬間を迎えた。今の芸能事務所の関係者に出会ったのだ。忠清北道曽坪郡で生まれて育った15歳の「田舎少女」には無理のような気がしたが、悩んだのもわずかな間。「わたしの父は特殊戦司令部の職業軍人なんです。わたしには軍人の挑戦精神の血が流れているみたい。地元の特産品の高麗ニンジンや、それを食べて大きくなった豚の肉をほとんど毎日食べて育ったから、心臓に毛が生えたのかも」。

 パク・ボヨンのあこがれはペ・ジョンオクだ。画面の中でペ・ジョンオクが泣くと一緒に泣き、笑うと一緒に笑う。彼女は「年月と仲良くなりたい」と言う。時の流れに顔を任せ、演技の幅も広げていきたいということだ。チョン・ドヨンやペ・ジョンオクが「真の女優」と呼ばれるようになるまで時間がかかったように。『スピード…』で人気が急上昇したが、焦りのようなものは感じられなかった。「わたしの出身地・忠清道の人はのんびり屋で有名。“せわしい”とか“あくせくする”ということを知らないんです」。

崔宝允(チェ・ボユン)記者
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