08年韓国芸能界:社会を動かした女性芸能人


 毎年年末になると1年を振り返りながら「多事多難」な年だったと思い返すことが多い。2008年もまたそんな「多事多難」な1年が終わろうとしている。

 2008年の韓国芸能界は本当にたくさんのニュースがあった。スターの相次ぐ死去など、例年になく事件や事故が多かった。また、トップスターたちの結婚やおめでたなど嬉しいニュースも相次いだ。

 しかし中でも2008年の芸能界を代表するもう一つのキーワードは「枠から抜け出した女性たち」だといえる。数人の女性芸能人の勇気ある選択が大きな波紋を呼び、社会的にも大きな反響を呼んだ。彼女たちの動きはドラマや映画などにも影響を及ぼした。

 2008年10月、突然の死で短い一生を終えた女優の故チェ・ジンシルさんは、1月初め、ソウル家庭裁判所に子どもの改姓と本籍変更を求める審判を申請し、大きな話題となった。元夫のチョ・ソンミンとの間に1男1女をもうけたチェ・ジンシルさんは、2000年に離婚した後、一人で二人の子どもを育ててきた。息子ファンヒ君の小学校入学を前に、子どもたちをもっと堂々と育てたいという思いからこのような決定を下したという。

 裁判所は5月30日、チェ・ジンシルさんのこのような申し出を受け入れ、二人の子どもの改姓と本籍変更を許可した。この後から離婚または再婚した女性が子どもの改姓を申請する動きが活発になった。

 これを可能にしたのは戸主制が2007年4月27日に廃止され、戸主制の代わりに「家族関係登録などに関する法律」が08年1月1日から施行されたため。これまで戸主制は女権伸張に反する制度と考えられてきた上に、「家族関係登録などと関連した法律」の施行と同じ時期に下されたチェ・ジンシルさんの決定は韓国社会に大きな意味を残した。

 これとともにチェ・ジンシルさんの死は韓国社会の親権に対する認識を変えた。チェ・ジンシルさんの死後、二人の子どもの親権は、現行法上、離婚前に親権を放棄していた元夫のチョ・ソンミンに自動的に回復された。これをきっかけに、一部では現行の親権制度の問題点を指摘し、改革を求める動きが起こった。この過程でソン・スク、ホ・スギョン、キム・ブソンらは親権法改正を求める記者会見を行うなど、積極的に協力した。

 社会の変化をリードしてきた女性芸能人はチェ・ジンシルさんだけではない。女性芸能人はシングルマザーに対する社会的な偏見まで変えた。結婚しないまま、2008年12月31日に息子を出産し、堂々と「シングルマザー」になることを宣言したホ・スギョン。

 シングルマザーに対する韓国社会の視線は冷たく、芸能人のホ・スギョンの出産のニュースは、さらに衝撃的だった。しかしホ・スギョンは自分の選択に迷いがないように見えた。

 出産後、ホ・スギョンはMBCラジオ『ソン・ソッキの視線集中』のインタビューに応じ、「子どもが両親に愛されて育つ家庭の形が一番美しいと思うけれど、どちらか一人が不在という状況でも生きていく理由があり、その状態を選ぶだけの価値があると思う」と自分の考えを明らかにしている。

 このほか、2007年10月に姦通容疑で告訴された女優のオク・ソリは、2008年1月に姦通罪に対する違憲法律審判を申請し、話題を集めた。当時、オク・ソリは「姦通罪は憲法に基づいた個人の性的な自己決定権とプライバシー権を深刻に侵害している」とし、姦通罪は不当であると主張した。

 しかし憲法裁判所は10月、オク・ソリが申請した違憲法律審判に対し合憲判決を下した。自分が姦通容疑で告訴されている状況の中でその不当さを主張したため説得力には欠けてはいたものの、世の中の非難に正面から立ち向かい、自分の主張を堂々と明らかにした姿は、人々の注目を集めるのに十分だった。

 ムン・グニョンの寄付も2008年の話題として欠かすことはできない。ムン・グニョンはこれまで6年間、人知れず社会福祉団体に8億5000万ウォン(約5870万円)を寄付してきた事実が明らかになり、話題を集めた。ムン・グニョンのこの寄付は政治的なものではないかという噂まで広がったが、「ノーブレス・オブリージュ(高貴な義務)」の意味を呼び起こし、人々に見本を示したという点で意味ある行動だと評価されている。

 女性芸能人の変化はドラマや映画などでも目についた。

 女優のキム・ヘジャはドラマ『母さんに角が生えた』で“安息年”を要求し、1年間家出をする母親を演じ、お茶の間を仰天させた。これまでの韓国ドラマの中の母親像は家族のために無条件献身する存在としてばかり描かれてきたからだ。同ドラマの中でキム・ヘジャの選択は現代を生きる主婦たちと母親たちの共感を得て大好評を集めた。

 母親の反乱だけでなく、妻の反乱を描いた作品もあった。夫の浮気に浮気で応える(『 糟糠(そうこう)の妻クラブ』(SBS))ドラマや、“一妻多夫”と内容を描いた映画(『妻が結婚した』)も登場した。

 ドラマや映画は現実の再構成として受け入れられる。そのような点でこれらの作品は確実に変化している韓国社会の一面を見せているといえる。

 2008年の芸能界は、芸能人、特に女性芸能人の個人史とそれに伴う決定と選択が社会的な共感を呼び起こし話題を集めた。この中の一部は一時的な話題で終わってしまったものの、韓国社会のごく一部の人々の問題にスポットライトを当て、表面にまで引き出したという点においては意味ある出来事であり、問題を提起した人々の選択は正しかったといえるだろう。

パク・ミエ記者
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