ジヨンさんはもう母親の服を借りて着るほど大きくなった。体格だけでなく心も成長し、母親の支えであり、慰めになっている。こんな娘がいれば寂しくないだろうか。恐る恐る聞いてみた。ファン・シネは05年2月、7年間の結婚生活にピリオドを打ち、シングルマザーとしてジヨンさんを育てている。
「当然、寂しいと思うことはあります。人は人を愛して愛されるために生まれたという言葉があるように、愛が必要な生き物です。昔も今も、恋を待っていなかったことはありません」
ファン・シネの顔に一瞬陰りが見えた。ファン・シネは1983年、ドラマ『私の心の風車』(MBC)でデビューした後、25年間女優として活躍しているが、女優としてもプライベートでもこれまで数多くの紆余(うよ)曲折を経験してきた。
「辛いことがあったときは、『人々の記憶から消えることができるなら消えてしまいたい』と思ったこともありました。でも数年間の空白期を経て、それは不可能なことだと分かりました」
十数年間、韓国で最も完ぺきな美貌の持ち主という賛辞を浴びてきたファン・シネ。しかし華やかなスポットライトの分だけ、その陰には苦しみがあった。顔ではなく演技について話したいことも多かったが、誰もが「美貌を維持する秘訣」のような質問ばかりをする、というもの悩みの一つだった。しかし仕方のないことだ。ファン・シネの変わらぬ美貌については、もう何度も聞いてきたことだが、どうしても聞かずにはいられないからだ。しかし返ってきた答えは意外なものだった。
「偶然、プライベートの席でチャン・ドンゴンさんと会い、話をしたことがありました。『視聴者は俳優を見るとき、演技よりもまずルックスをチェックするみたい。だからわたしは一度も演技がうまいと言われたことがないの』と言うと、『その気持ち、分かります。僕もそう感じますから』と言っていました(笑)」
ファン・シネはスタイルや顔に対する賛辞ばかりが集まるのは、得より損の方が大きいという話をしたがった。また、完ぺきな美貌を誇るファン・シネにも羨望の思いを抱かせる後輩がいるという。
「生まれ変わるならキム・ミニさんになりたいです。整った目鼻立ちというわけではないけれど、可愛らしい顔にスレンダーなボディ、ファッショナブルなスタイルがうらやましいですね。俳優の中では、ハ・ジョンウさんに一度会ってみたいわ(笑)」
ファン・シネは人々から「朝露を食べて生きているようだ」「おならはするのか」などと言われるが、実際はテーブルに落ちた食べ物も拾って食べるほど気さくな女性だ。本当の性格を知っている人たちは、女王様ではなく召使いと呼ぶという。
ファン・シネは既に「完熟」という言葉が似合う年齢になった。演技においても人生においても、ターニングポイントに来ている。久しぶりに姿を現したファン・シネからは、なぜか古くなるほどその価値が認められるワインのような香りがした。歳月という実を熟成させたファン・シネ印ワインは最高においしいことだろう。