ケータイもつながらない離島で一休み


 慶尚南道統営市欲知面の頭尾島。「欲知面」という地名を聞いただけで遠く感じるが、そこにある島と言われると、さらに遠くにあるような気がする。幸い、統営旅客ターミナルから頭尾島に直航する船が1日に2便運航している。携帯電話もよくつながらないという頭尾島北区の船着場に船が近づくと、電話機を耳に当てたカン・ドピョン里長の姿が最初に目についた。

 「携帯電話がつながるんですか」「ここまで出てこなきゃ、つながらなくてね。5回ぐらいかけるとつながるかな。基地局が山の向こうの南区にあるから仕方ない」

 家の中までは電波がよく届かないため、外に出て電話を受けなければならない。それも天気のいい日は比較的よくつながるが、曇りや風のある日はつながりにくいという。よく晴れ上がった12日に訪ねた民宿では携帯電話が使えなかったが、外に出ると電波が届いた。電波が弱いときに送られてきたメールが後になって届くこともあった。

 「不便でしょ? それなのにソウルの人たちはわざわざこんな所まで来るんだよ」

 閑麗水道のほかの島同様、頭尾島も釣人たちの間で先に有名になった。広い海は穏やかで、天気も安定しているため魚が多い。メバル、マダイ、クロダイが釣れることで有名だが、釣りがあまり好きではないという人は、島をゆっくりと散歩しながら海を眺めることくらいが頭尾島でできることのすべてだ。少し物足りないような気もするが、陸地からポツンと離れた島で「デジタル毒素」がゆっくりと消えていくような気がしてくる。

 素朴な民宿でのんびりとした時間を過ごすのもこの島の魅力の一つ。頭尾里217番地。船着場から徒歩5分の距離にある「海岸の家」では、窓から海がよく見渡せる。

 主人のソ・セホさんが今年7月に初めて設置したというコンピューターが居間にあるが、宿泊客用の2人部屋には寝具とハンガーしかない。地方のビジネスホテルに行ってもテレビやインターネットがある「IT(情報技術)大国韓国」にこんな素朴な部屋があるのはむしろ新鮮だ。

 「南区と北区の間に天皇山があるが、そこに登山路を作るという話がある。そしたらたくさんの人が来るようになるじゃないか。僕はこの村が今のようにずっと静かな方がいい。登山路を作ってほしくないってことだよ!」

 静かにやって来て、静かに帰っていく旅行客と住民たちが作り出す「静寂」が好きだというカン里長の大演説に、鳥たちが同意するかのように鳴いた。

◆行き方

 統営旅客ターミナルから午前6時50分、午後1時40分に頭尾北区行きの「パダラン号」が出発する。統営から出発する船は午前8時、午後4時30分の2便。片道約8400ウォン(約570円)、経由地によって所要時間は約1時間20分-2時間30分。

◆民宿への問い合わせ

 携帯電話がつながらない場合、メールを送っておくと、確認後に電話をくれる。1泊3万-10万ウォン(約2000-約6880円)。トンベク民宿では、主人のチェ・ソンギルさんがエイやメイタガレイなど獲れたての魚で刺し身1皿(約4人分)を3万ウォン程度(海鮮鍋を含む)で準備してくれる。食事は1食約5000ウォン(約340円)。

キム・シニョン記者
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