「男優が脱いだ!」とこれほどまで大きな話題になる俳優が何人いるだろうか。俳優チョ・インソン(27)はその貴重な一人だ。整った顔立ちと明るい笑顔が魅力の「イケメン俳優」ナンバーワンといっていい。だが、18日にソウル市鍾路区三清洞で会ったチョ・インソンは、あの難解なメソッド演技法(ロシアの演出家スタニスラフスキーが提唱した演技理論に基づくもので、俳優が完全に劇中の役になりきるなど、人間の内面を重視した演技法)を力説するほど真剣だった。30日に公開される映画『霜花店』でチョ・インソンが見せた演技の裏には、何か内面の変化があったのだろうか。
―ユ・ハ監督の『卑劣な通り』以来2年ぶりの映画だが、台本をもらったとき、同性愛シーンやヒロインとのベッドシーンに悩んだのでは?
「シェークスピア作品のようだと思った。監督の作品『情愛』(原題『結婚は正気の沙汰〈さた〉ではない』)=2002年=を見て、映画の中の情事シーンは“ベッドシーンのためのベッドシーン”ではないと思った。俳優だから、一度くらいはやってみなければと思った」
『霜花店』は高麗末期、恭愍王の時代を背景に、王(チュ・ジンモ)と護衛武士のホンリム(チョ・インソン)、元(げん)出身の王妃(ソン・ジヒョ)のすれ違う運命と愛を描いた作品。護衛部隊「乾竜衛」の隊長ホンリムのモデルは、王の側室を妊娠させ、王を殺した高麗時代の実在の人物・洪倫(ホン・リュン)などだ。
「ドラマ『バリでの出来事』や『春の日』のときのような“少年っぽさがある男”のイメージばかりだったら飽きられるのでは。仏教に“我相(がそう=自我に固執する考え)を壊せ”という言葉がある。いつまでも“スターのチョ・インソン”ではいられない。でも、予想以上に期待していただいているので、ものすごく重い荷物を背負っているようで恐ろしい。これまで僕は、こんなに大きな期待をかけられて映画を撮影したことはない」
―イメチェンを嫌がるファンもいるだろう。
「僕もそうだが、いわゆる“イケメン”といわれる人々に対する偏見をぶち壊したかった。“いい意味での裏切り”ができれば、出番が増える。見ていて気持ちよく使われるのは、楽しいことでは?」
―そのおかげで、「同性愛者」といううわさまで流れたが。
「雨に降られたくなければ、家から出なければいい。出てしまったら、傘を差していても雨にぬれるのは避けられない」。
(チョ・インソンと仲のいい女優コ・ヒョンジョンが2年前、「雨が降る日にぬれたくなければ、外に出なければいい」と話したのを連想させる言葉だ)