ドラマ制作社協会(シン・ヒョンテク会長)は5日、理事会を開き、俳優パク・シニャンに対し無期限でドラマ出演を停止させることを決議した。協会側は「パク・シニャンが『銭(ゼニ)の戦争』の延長分の追加出演料として要求した額は1話当たり1億7000万ウォン(約1100万円)に達する。これは韓国内の市場規模を考えると、非常識な額で、市場を混乱させるもの」と主張した。(本紙12月6日付報道)
ペ・ヨンジュン2億5000万ウォン(約1660万円)、パク・シニャン1億5500万ウォン(約1030万円)、ソン・スンホン7000万ウォン(約460万円)、クォン・サンウ5000万ウォン(約330万円)…。
今月1日、放送会館(ソウル市陽川区木洞)で開かれたセミナーで、鮮文大学のキム・ジヌン教授が公表したスターのドラマ1話当たりの出演料だ。2006年にMBCドラマ『キツネちゃん何してるの』に出演したコ・ヒョンジョンが1話当たり2500万ウォン(約166万円)の出演料で話題になったことを考えれば、この数年間で「トップ俳優の出演料」は約10倍に跳ね上がったことになる。
ドラマによって異なるが、ドラマ1本当たりの平均制作費は1億5000万-2億3000万ウォン(約990万-1520万円)台だ。外注のドラマ制作会社は、このうち50-60%を受け取ることで各テレビ局と契約を結ぶ。一人か二人の主演俳優の出演料を払ったら、一銭も残らない額だ。それなのになぜ、外注制作会社は採算が合うはずもないこうした事業モデルを維持しているのだろうか。
ドラマ1本当たりの制作費が約1億5000万ウォンかかる一方で、外注制作会社がテレビ局から7500万-9000万ウォン(約500万-600万円)しか受け取らないのは、企業協賛や間接広告という別の収入源があるからだ。だが、そうだとしても、トップクラスの俳優一人に1話当たり5000万-7000万ウォン(約330万-460万円)の出演料を支払うことの説明にはならない。
キム・ジヌン教授は「韓流ブームで、韓国ドラマが日本や中国をはじめとする海外でも通用すると分かったときから、トップ俳優の出演料は急騰した」と話す。それまで内需産業と思われていたドラマが輸出産業と認識されるようになり、外注制作会社は韓国のテレビ局から受け取る「微々たる額」のほか、日本や中国にドラマを輸出し、追加収入を得るチャンスに恵まれたのだ。
「大もうけ」を狙う投資家たちの資金がドラマ市場に集中しているのも同じ理由からだ。その一方で、外注制作会社も「大口の投資家」を引き入れようと、必死になって韓流スター確保合戦を繰り広げた。キム教授は「ドラマが海外でヒットすれば収益が上がるという可能性に賭け、“スターの青田買い”としての投資が行われた」と説明する。
ところが、『冬のソナタ』『宮廷女官チャングムの誓い』以降、海外で大ヒットした韓国ドラマは出ていない。外注制作会社は可能性を信じ、俳優に「大金」を投資したが、結局は利益を上げられない状況に追い込まれているのだ。
韓国放送映像産業振興院(KBI)のハ・ユングム責任研究員は「韓国では同じようなレベルに見える俳優でも、日本や中国での知名度や人気によって、1話当たりのドラマ出演料は2000万-3000万ウォン(約130万-200万円)台と、5000万-7000万ウォン(約330万-460万円)台にはっきりと分かれる」と話す。「輸出の可能性」により、出演料に差が出るというわけだ。
しかし韓流ブームも長続きはせず、韓国ドラマは再び内需産業になり下がってしまった。このところの経済危機で、KBSやMBCといった主なテレビ局は、コスト削減のためドラマ制作本数を減らしている。海外市場開拓を念頭に置き投資したが、内需市場まで縮小する事態となり、外注制作会社にとって、俳優の高額な出演料は災難以外の何者でもなくなった。
ドラマ制作社協会が多額の出演料を要求したパク・シニャンに対し無期限出演停止を決議したのに続き、韓国テレビドラマ・プロデューサー協会までもが「タブー」だった俳優の出演料を公表するようになった背景には、「このままではもうドラマが作れない」という危機感があるからだ。