『彼らが住む世界』脚本家「低視聴率の責任感じる」


 人気ドラマ脚本家のノ・ヒギョン(42)。まさに「視聴率のブラックホール」的存在であり、韓国ドラマ界では大切な存在だ。『嘘』『バカな愛』『花より美しい』などの作品を通じて、ドラマも真剣な批評の対象になり得るという事実を証明してきた。そんなノ・ヒギョンにとって、『彼らが住む世界』(KBS第2)はかなり大きな冒険だった。ソン・ヘギョ、ヒョンビンなどのトップスターを起用し、巨額の制作費を投入、商業的にも成功するという野心を前面に押し出した作品だからだ。しかし第10話までの視聴率は5%前後と低い。一部熱烈ファンの反応はこうだ。「こんなに面白いのにどうして皆見ないのだろうか」。複雑な心境のはずのノ・ヒギョンに11月26日午後、グランド・ヒルトン・ソウル・ホテル(ソウル市西大門区弘恩洞)のコーヒーショップで会った。

 「正直、わたしが望んでいた視聴率は18%程度だった。今回もダメなのを見て、わたしは本当にばかだなと思った」と話すノ・ヒギョン。

-視聴率が期待以下の結果にとどまっているが、視聴者に対する思いは?

 「残念。『どうしたの?』『どうして見ないの?』と聞いてみたい。それに、わたしは前払いで脚本料を受け取っているけれど、視聴率が低くてスポンサーがつかなかったら、制作会社、テレビ局、スタッフが被害を受けることになる。居ても立ってもいられないといった心境だった。でも今はそんな罪悪感から少し立ち直った。日本など海外への輸出の面では悪くないというから。『神様! 仏様!』と叫んでしまった。ここで挫折することはできない。自分の問題点を掘り下げてみるつもり」

-何が原因だと思うか。テレビ局、芸能界という視聴者受けする業界を舞台にしているのにもかかわらず、どうして視聴率が伸びないと思うか。

 「女優のユン・ヨジョンさんが手痛い指摘をなさった。“関係者用だ”と。こっちの世界を少しでも知っている人は『リアルだ』と一生懸命に見てくれるが、一般の人たちにはよく伝わらないようだ。その部分に気がつかなかった。配慮が足りなかった」

-テレビ局を舞台にした理由は?

 「テレビ局は面白い。子どものころ見かけた新人が突然大スターになり、とても尊敬していたスターがある日突然没落するのを目の当たりにしたり、わたしの書いたセリフを俳優たちが涙を流しながら練習しているのを見ると、こんなに美しい空間があるかと思った。だからドラマの制作過程を書いてみた」

-自分の書いたセリフで俳優たちが泣くと感激するのでは?

 「(笑)正直、少し得意になってしまう。また、偽りを書いてはいけないと思い、もっと注意深くなろうと心に誓う」

-作家や俳優よりプロデューサーの日常に焦点を当てているが。

 「脚本家たちの話は既に何度も出てきている。『韓国でドラマの脚本家はすごい存在』という一部の間違った認識を変えたかった。たくさんの作家志望者たちが、自分が有名になったらドラマの制作現場で絶対権力を持つことになるという妄想を抱いているようだが、とんでもないこと。うまく書けたらお金で評価されればいい。現場で殿様になってはいけない。ドラマは縦より横の関係で制作されるべき」

-現場で殿様になっている作家がいるようだが。

 「ハハハ。いるかもしれない。わたしはよく知らないけれど。これ以上聞かないで(笑)。とにかく、そんな殿様になるのを夢見ている後輩たちを時々見かける。危険なことだ」

-このドラマは台本をあらかじめ完成させた後、撮影に入ったという点で珍しい作品といえるが。

 「制作費を半分以下に減らすことができた。わたしはもともと前もってたくさん書いておく方。その場その場で台本を変える方ではない。作家として俳優の演技を指摘するには、あらかじめ台本を渡しておかなければいけないと思う」

-あなたのドラマはいつも心に傷を持った疎外された人物が主人公だが。

 「心に傷を持たない人は見たことがない。離婚した兄の子どもたちと一緒に暮らしているが、その子どもたちも生きていくのは大変だと言っている。『彼らが住む世界』はこれまでの作品とは違い、治癒の過程に焦点を当てていない。人は皆大小の傷を抱えているが、生きていくにさして差し障りはないということを伝えたかった」

-あなたの人生の傷は何か。

 「父親の浮気、貧乏、勉強のできないわたし自身…。わたしが人を裏切ったこともあるし、裏切られたこともある。美人じゃないという劣等感、性格がよくないという自責の念…など、いろいろある。でもこれくらいの年齢になると、誰もが経験しているようなことでよく何度も(脚本に)しぼり出しているなあと思う」

-インターネットでソン・ヘギョさんの演技について論争が持ち上がったことがあるが。

 「作家としては満足すべき現象。ヘギョさんがあまりにうまく演じていたら、それもまた気持ち悪かったのでは? わたしがヘギョさんの年齢だったとき…26歳のころ、わたしは至るところでぶつかってばかりだった。会社(出版社)をあちこち移り歩いていたが、首にならなければ会社が倒産した。未熟で子どもだった当時のわたしと比べれば、ヘギョさんはとてつもなく大人だ。だからかもしれないが、彼女が失敗してもわたしにはあまり見えない。こんな女優の方が10年後にはもっと成長するかもしれない。

しっかり育ててあげたい」

チェ・スンヒョン記者
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