イワン、「キム・テヒの弟」から「真の俳優」へ

 「キム・テヒの弟として注目を浴びたが、今後は演技で認められたい」

 こんなに運のいい人がどれくらいいるのか。姉の財布に入っていた写真がドラマ監督の目に止まり、すぐさまドラマ『天国の階段』にキャスティング、出演するやいなや「新鮮なまなざし」と爆発的な関心を集め、わずか3話分に出演しただけなのに、2本目のドラマで主役の座を射止め、2004年にKBS、SBSの「演技大賞」で新人賞を獲得したイワン。

 「キム・テヒの弟」でなかったら、キム・ヒョンス(24)、いや俳優イワンがこのように一気にスター性を認められただろうか。しかし、イワンの映画デビュー作『少年は泣かない』(6日公開)を見ると、イワンからキム・テヒの顔が次第に消えていく。日本の小説『傷痕』を原作としたこの映画で、彼は6・25戦争(朝鮮戦争)後、廃墟となったソウルで生きていくため、大人たちと争いを繰り広げる、ケンカっ早いが情に厚い少年ジョンドゥ役を演じた。映画デビュー作でいきなり主演。冷徹で自己中心的なテホ役を務めるソン・チャンウィとのW主演で、物語を引っ張っていく。当時のすさまじい様子を水彩画のように描いた同作で際立っているのは、断然イワンだ。1950年代の少年のように見せるため筋肉を落とし、役作りに余念がなかったが、何よりも強烈なまなざしとアクションで、「結局生き残る少年」の壮絶な悲しみを全身で乗り越える、「温かいカリスマの化身」を完ぺきにこなした。

 5日に会ったイワンに、「運がいいね」と話しかけると、「よく分かっています」と笑った。「でも楽なことばかりではありませんでした。ドラマを撮ってるときはかなりストレスを受けて、髪の毛もすごく抜けました。撮影中台風に遭って、海で溺れて死にそうになったこともあるし、マイナス20度の雪の上で20時間、半袖に裸足という姿で立っていたこともありました。今回の映画でも、何度もムチが首に巻きついたり、やけどを負ったり…」

 息切れするくらいの勢いで「体を張った」演技について説明するイワンは、「キム・テヒの弟」として有名になったということは事実だが、それが自身にとって「ストレス」の要因になったという。しかし「姉とぼくは別々の存在」とか「キム・テヒの弟という修飾語は忘れてください」などと決まりきった言葉を言わないイワン。ただ「同じ作品には絶対出演しない」とだけ言い切った。「国民をからかっているのと同じ。悪口を言われますよ」

 むしろイワンにとってキム・テヒは「スター女優」としてうらやましい対象のようだった。「姉ぐらいのクラスになると、財閥の男性との熱愛説のようなうわさも出るじゃないですか。僕はせいぜい“背が低い”“首が短い”“首が太い”とか、こういう話しか出ません」

 クールな世代らしく、冷静に姉と自分を評価する。「姉は演技が下手だと言われてるじゃないですか。でも自分も演技をしてみて、姉はすごいと思いました。姉はCMでの演技が本当に上手です。ドラマ『オンエアー』で“CMの演技は誰でもできるものじゃない”というセリフがありました。一つでも上手なものがあるということが、どれだけ大変なことか」「映画関係者たちから見ると、僕の存在感は本当に微々たるものだったでしょう。テレビのチャンネルを回しながら偶然顔を1、2回見たぐらい、あるいはキム・テヒの弟? それくらいのレベルでした。そんな人たちから“可能性のある新人”と言われたかったのです」

 「全科目優等生」ではないが、得意科目だけ効率的に選び出す才能を持っているようだ。今回の映画では、関心を持っている戦争というテーマで、体育学科の学生らしくアクション演技も披露できた。強烈なまなざしを向けても違和感なく見える部分が気に入っているという。

 5年前、デビュー作の『天国の階段』を見ながら、本当に演技がぎこちなく「放送事故だ。大変なことになった」と心の中で叫んだというイワン。「今は少しずつ演技を理解するようになり、心から欲が出てきた」という。それは意外に素朴だった。「時には公開3日で終わる映画もあります。本当にそうなりたくありません。

少なくとも1週間は上映されればいいなと思います」

チェ・ボユン記者
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