紅葉も花もない、晩秋の登山の魅力


 登山マニアたちは「今が一番山登りに適した時期」と口をそろえる。しかしすぐには納得いかない。この時期に山に登っても何もないからだ。華やかな紅葉や花もなく、雪も積もっていない。晩秋から初冬にかけての山はみすぼらしいことこの上ないではないか。

 毎年11月末になると、「落ち葉の山」に登るというトレッキング専門家のユン・チスルさんは「本当の山に登るならば今。山は荒涼としてひっそり静まり返り、だからこそ山らしい」と話す。山が最も山らしいという晩秋から初冬までのトレッキング。その難解ともいえる魅力を専門家たちに詳しく聞いてみた。

◆トレッキング専門家ユン・チスル「寒い? そのひりひりするような寒さがいい」

 「山登りはもともと寒いときの方がいい。体は動かすほど熱くなってくるのに、気温まで高かったらむしろ歩きにくいもの。適度に寒く冷えた、晩秋の晴れの日こそ、歩くのに適しているといえる。汗もすぐに引き、何時間歩いてもさわやかだ。林からコーヒーのような甘い香りが漂ってくるのも今ごろの時期。

 花も木の葉もないみすぼらしい森だが、地面に積もった落ち葉や枝から何とも言えないいい香りが立ち上ってくる。この香りをかいでしまえば、晩秋の山に魅了されること間違いなしだ。春や夏の山がきれいに着飾った若い女性ならば、晩秋の山は素顔のままで出てきた妻のようだ」


◆クイ山岳会カン・ヨンイル会長「柔らかくフカフカした落ち葉、空を見る楽しみ」

 「落ち葉を踏みながら山を登るのに一番いい季節。色とりどりの紅葉が散り、地面がフカフカになる。足首まで埋まるほどの落ち葉のじゅうたんはこの上なく柔らかい。空が一番よく見えるのもこの時期だ。すべての葉が散り落ちた森から見上げた真っ青な空は、驚くほど広くすみ渡り、明るく輝いている」

◆月刊『山』ハン・ピルソク記者「静かな山奥、心構えが違ってくる」

 「毎年、山岳同好会の会員たちは11月末から12月末まで忘年登山というイベントを行う。登山をしながら自分を振り返る時間を持つためのイベントだが、森が静かで寂しいほど思いに浸ることができ、過去を振り返るのにぴったり。季節ごとにそれぞれ魅力は違うものだが、春と夏には気分がわき立ち、知らないうちに笑顔になってしまう。秋は美しい紅葉に魅せられて口笛を吹いてしまうし、晩秋は落ち葉に酔っていつの間にか真剣に自分を見つめている。

誰かと真剣な話をしたい人たちにぜひ勧めたいのが忘年登山」

ソン・ヘジン記者
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