演劇は食えない職業だという認識は21世紀になっても同じだ。興行的に成功する演劇もあるが、映画やドラマのように大きな収益を残す作品は珍しい。だから演劇は「好きでできる仕事」ではなく、「没頭し、夢中でやってこそ成果を出せる仕事」だという。それなのになぜペ・ドゥナは、しきりに演劇に目を向けるのだろうか。ペ・ドゥナ、そして彼女の母キム・ファヨンに気になることを直撃した。
ペ・ドゥナに聞いた。『彼女が帰ってきた』は彼女がプロデュースする3本目の演劇。ドラマや映画で女優としての地位を固めたのに、演劇に目を向けるようになった理由、出演者ではなくプロデューサーとして参加する理由は何なのか?
「初めて演劇をプロデュースしたときから、1回で終わりにしようとは思っていませんでした。女優の仕事で稼いだ収益の一部を集めて、演劇を制作すると心に決めたんです。もっと何回もやりたいけど、物理的にも時間的にも余裕がありません。最近はわたしの心に響く作品に出会えなかったり、作品が気に入っても制作できなかったりしました。まだ楽しむほどの余裕はありませんが、とにかく少し余裕が出来て、ちょうど母に出演オファーがあったので、わたしも気に入っている作品だし、プロデュースすることになりました」
娘がプロデュースする演劇『彼女が帰ってきた』で主人公クララ役を引き受けたキム・ファヨン。今回の役を引き受けた理由を彼女に聞いた。
「昨年、この演劇の初演を見ました。演出家にこういう作品はわたしの年ぐらいの者がやるのが合ってないかと。俳優が幼すぎると冗談交じりにダメ出しをしました。そしたら本当に出演オファーが来たんです。共演するイ・ミベさんについてもお話ししたいですね。わたしが出演を決めた後、演出家と作品についてあらゆる話をしているとき、イ・ミベ先輩のイメージが浮かびました。先輩はわたしより1学年上でしたが、隣の学校でかなり有名な歌手でした。個人的に親しく、先輩も10年ぶりに新しいアルバムを出したので、時期的にも合っていたと思います。秋にシャンソン歌手が演劇の舞台で歌を歌ったらどんなに素敵か。でも先輩をキャスティングすると制作費が足りなくなるのが分かっていたので、ドゥナにプロデュースを頼むことになりました」
ペ・ドゥナに聞いた。今回の演劇は以前の作品とは違い、プロデュースだけでなく、母との仕事となりさらに感慨深いようだ。プロデューサーとして母と一緒に仕事をする感想は? 興行に関してのプレッシャーもあると思うが…。
「母が出演を承諾した後、イ・ミベ先生と共演したいと。そうすると制作費が予想より上回るから、助けてくれないかと打診されたので、「はい」と言いました(笑)。興行ですか? お客さんがたくさん入るに越したことはありませんが、それより作品が良かったという評価を聞きたいです」
キム・ファヨンに聞いた。母と娘の関係ではなく女優の先輩、人生の先輩としてペ・ドゥナにアドバイスを惜しまないとか。普段、娘とどんな会話をしているのか。またペ・ドゥナに収入の一定額を集めて、演劇制作会社を作ることを勧めたそうだが、何か特別な事情があったのか。
「女優としてはドゥナに“自由な想像力を楽しみなさい、旅行をたくさんしなさい、やりたい事は恐れずに挑戦しなさい”とアドバイスしています。演劇制作会社の立ち上げについては、大衆から愛される俳優はオピニオンリーダーとして存在しなければならないと思うからです。受けた愛はどんな形でも返さなければいけないと言ってきました。幸いドゥナが何の抵抗もなく、素直に聞き入れましたね」
取材=ペク・ウニョン、チャン・セヨン記者 写真=イ・ヒチョル 協賛=ラインヘアーメイクアップ