どちらとも古漬けキムチなのに、どうして酸っぱくなったキムチは嫌われ、長期間熟成させたキムチは好まれるのか。
答えは「熟成」だ。キムチが酸っぱくなると乳酸菌が自己分解を始める。簡単に言えば、年を取って死んでいくということだ。この過程で乳酸菌を食べて生きる酵母が増える。古くなったキムチのつぼを開けたとき、ツンとしたアルコール臭が漂うのはこの酵母のためだ。酵母が増えると白菜のサクサクとした歯ざわりは徐々になくなり、しなびてくる。
熟成キムチも乳酸菌が自己分解を始める段階を超えたキムチだ。酸っぱくなったキムチとの差は、低い温度で長い間、ゆっくり「老化」が進んだという点。
「宗家キムチ」を製造している大象FNF技術研究所のチーム長、イ・ジンヒョクさんは熟成キムチについて「熟成されていくうちに酸っぱさや辛さが和らぐ」と説明した。熟成の期間を経て、後味の悪さを残すタンニンが柔らかく変化する。これはワインが長い期間を経ることにより味が柔らかくなるのと同じ原理だ。
熟成キムチはまだワインのようにどれくらいの温度や湿度で貯蔵すると美味しく熟成するのか明確になっていない。イさんは「長期間熟成したキムチがあるという店に行って食べてみると、色が黒く変色し、食感が悪かったり、これが本当に熟成キムチなのかと疑いたくなるようなものがほとんど」と話した。イさんは1年半前から熟成キムチ作りに挑戦している。「18カ月前に漬けた熟成キムチだからビンテージ(生産年度)は2005年産ということになります」。熟成温度は氷点下1度から摂氏1度を維持している。まだサクサクとした歯ざわりが残っており、黒く変色もしていない。
イさんはワインのビンテージの概念を熟成キムチにも適用できるか研究している。どちらとも発酵食品のため、キムチもワインのように熟成期間をおくことでより見事な味を出すことができるのではないかと考えるからだ。ワインのように熟成キムチも「偉大なビンテージものを発見した」と発表する日が来るだろうか。2年、3年、5年後の熟成キムチの未来が期待される。
では、韓国人が最も美味しいと感じるキムチはどのような味か。イさんは「キムジャン(立冬前後に行われる越冬用キムチの漬け込み)で漬けたキムチ」と話す。「越冬用キムチから出る乳酸菌は炭酸をたくさん含んでおり、ピリッと舌を刺激するようなさっぱりした辛さでありながら、酸味は少ない。しかし、夏に漬けるキムチから出る乳酸菌はキムチが十分に発酵しないうちに酸っぱくなってしまう」
塩辛はエビとカタクチイワシを1対2の割合で混ぜて使う。イさんはこの比率を「黄金比率」と呼ぶ。「20年前からいろいろな塩辛を使い、さまざまな比率で実験してみたけれど、消費者が一番美味しいと感じるのはエビとカタクチイワシの塩辛を1対2の割合で使用したもの」とイさんは言う。エビの塩辛は最初は生臭いが、発酵するにつれ徐々にさっぱりした味わいを引き出す。浅漬けキムチにはカタクチイワシの塩辛だけを使う。イさんによると、「カタクチイワシ特有の風味が野菜の臭みを取り除く」という。
一般の家庭ではスケトウダラなど魚の身をキムチに入れることもあるが、宗家キムチには使用していない。その独特の風味が好きな人もいるが、嫌いな人もいるからだ。
キムチ冷蔵庫ブランド「ディムチェ」が運営するキムチ研究所のチョン・ジョンイン課長は「キムチの熟成温度は15度が理想的」と話す。「キムチが発酵する過程では13種程度の乳酸菌が生産されます。これらの乳酸菌をDNA分析してみると、15度で生産される乳酸菌が分泌する栄養学的価値が最も高かった」
チョン課長は「キムチを最も美味しく長期間保存できる温度は平均氷点下1.4度。キムチ冷蔵庫では、6カ月間は味の変化なくキムチを貯蔵することができる」と説明した。