韓国映画界の鬼才、キム・ギドク監督の最新作『悲夢』の日本公開が決まり、主演のオダギリジョーとともに20日、都内ホテルで会見に臨んだ。
『悲夢』はオダギリジョーの初の海外監督とのタッグ作品であると同時に、初の本格的な恋愛もの、ということでも話題となっている。別れた恋人の夢を見続ける男(オダギリ)と、その夢の通りに行動する夢遊病の女(イ・ナヨン)。二人は出会い、狂おしいほど切ない恋に落ちる。運命に翻弄される男女を描いた悲恋劇だ。
キム監督は以前から作品を見ていて、エネルギーを感じるオダギリさんに興味を抱いており、出演してほしいと思っていたが、スケジュールが難しいとのことであきらめかけていた。最初からオダギリさんの配役は考えていたが、相手役については考えていなかった。自分の作品を好む女優さんもあまりいないので(笑)。しかし、オダギリさんが決まった後には、多くの有名女優さんらから出演したい、と言われるようになり、結局イ・ナヨンさんに決まった」とキャスティングの経緯を明かした。
オダギリは「もともとキム監督のファンで、オファーがあってすぐ出たいと思った。監督の作品は、人間のどろどろした、人には見せたくない部分を表現する。また、自分が夢に興味があったのも決め手」と語り、相思相愛だったことを明かした。
オダギリは夢に興味があり、20代前半のころ、自分の見た夢を記録する「夢日記」を付けていた、と話すとキム監督も「自分も昔、夢日記を書いていた」と明かし、そんな共通した夢への関心も、映画に投影されたようだ。
また、イ・ナヨンとの共演について「自分もそうだが、彼女も人見知りするタイプ。自分がもう少し、近くに座ったり、天気の話でもすればいいのだが、できない(笑)。自分はいつも打ち解けられないのが壁なのだが、逆にそういった似た人間として気持ちが分かり、その距離感も気持ちよく、信頼できた」と微妙な距離感ながらよい関係を築けたとした。
「初の本格的なラブストーリー」とされるが、自身は実はラブストーリーは好きではないという。「これはラブストーリーだけどそれ以外のものがある」とし、キム監督は「100%ラブストーリーではないが、愛の限界を撮りたかった」と話し、その作品の奥深さを感じさせた。
映画『悲夢』は来年2月初旬より、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショーされる。
東京=野崎友子通信員