-ドラマで冷たく冷静な役を演じたせいか、『アンティーク』ではあまりにも普通の男性の役だったので驚いた。
「よくそう言われる。僕はむしろそういう反応に驚いている。僕は今も以前も、悪いこと以外はしたいことをしながら生きてきた。そういう風に感じたかったし。そのような経験が演技の足しになるとも思っている。それなのに僕がこれまで自然に見えなかったとは…」
-『アンティーク』で何を見せたいと思っているか。
「僕はまだ100%信頼される俳優ではない。何かを見せるということ自体が難しい。そんな余力はない。今できることは、最善を尽くすことだけだ。演技をしながら少しずつ自我を取り戻している気分だ。『アンティーク』に出演しながら、心の中の暗い部分が少しずつ晴れていくような気がした。映画のように。そして多様性を学んだ。人間の二重性について悩んだ結果、さまざまなことを知った。一人でいることが好きだが、外では笑って騒いでいる。本当に親しい人たちと。そうすると、家にいる時の自分が本物なのか、外の自分が本当なのか分からなくなる。結局、僕は僕でしかないのに」
-初めての映画だが、楽しかったことは?
「初めて監督と話した。『宮』や『魔王』では、監督は父親のように厳しく、なかなか質問することができなかった。今考えると、僕のキャラクターのためにわざとそういう風に振舞っていたのではないかとも思うが…。でも『アンティーク』のミン・ギュドン監督は繊細な方である上に、撮影の期間がテレビより余裕があったので、いろいろ話をすることができてすごくうれしかった」
-人に悪く言われるのが怖いか。
「うまく演じることができていれば悪く言われないだろう(笑)。『アンティーク』に出演しながら少し余裕ができた」
-『アンティーク』の主人公4人中3人がモデル出身だ。故イ・オンさんの葬儀にも出席したのを見かけた。一度信頼すると最後まで信頼するタイプか。
「僕の心の中に一人の人物がいる。その友達を外国で待っていた…。その時…(チュ・ジフンはこのとき顔を伏せ、3分ほど顔を上げることができなかった。突然汗と一緒に流れる涙が、友を失ったチュ・ジフンの悲しみを物語っていた)僕の友達はほとんどが個人主義だ。お互いにそういう部分をよく知っているし、信頼している。そういう人ばかり集まるし。(チュ・ジフンは気分を変えるように『映画の話をしよう』と言って笑った。顔には涙の跡が残っていた)」
-『アンティーク』のメンバーとは息が合っていたか。
「最初にみんなで集まって一緒に飲みながら話をした。お互いにほめ合ったり、叱り合ったりしようと。キム・ジェウクはもともとソフトな話し方。チェ・ジホ先輩は初めての経験のせいか、聞き役に回っていた。ユ・アインは少々語調がきつい(笑)」
-今見せることができる部分はすべて見せたように思えるが。
「宿題が多かった。僕たちはワンシーンに全員が収まることが多かった。結局、二人だけ登場してもいつも同じ空間にいるということになる。だからセリフもなく2‐3分間リアクションをしなければならないことも多く、その時間が永遠のように感じられた。演劇をしたこともないので、リアクションが難しかった。何より僕の行動の正当性を表現しなければならなかった」
-映画でのようにトラウマがあるか。
「ある。幼いころのトラウマがあるし、新たなトラウマもできた」
-話せることだけ聞かせてほしいが。
「アジア通貨危機の時代、家が苦しくて、高校を辞めようかと思ったことがある。父親が糖尿病で、当時僕は祖父母と一緒に暮らしていた。結局そういうことにはならなかったが、父親が足を切断するかもしれないという話を祖父がしているのを聞いた。足元が崩れ落ちるような気がした。だから高校を辞めて働かなければと思った。
僕は今でも子どものころの自分にとても縛られている」