旬を迎える「寒ブリ」に舌鼓


 10月23日午前4時30分、鷺梁津水産市場(ソウル市銅雀区)。ウエスティン朝鮮ホテルの日本料理店「すしぞう」で調理師を務める松本瑞穂さん(34)が2匹のブリを手に取って見ている。この日朝、済州島から空輸されてきたブリの重さはそれぞれ11.5キロと12キロ。松本さんは手の平でブリの腹をギュッと押し、エラを広げて中身をチェックした。満足そうな表情だ。

 「鮮度が素晴らしい。ブリは腹を押してみたときに固いものほどいいんです。中に何か入っているという感触というか…。柔らかければ捕まえてから時間が経っているか、鮮度が落ちている証拠です。目がきれいで、エラの中は赤かピンクであること。茶色だったら鮮度が低いということです」

 いいブリを手に入れるため、午前1時に水産市場に行ったという「ヨンジン流通」のウォン・ヨンジン代表は「10月初めからがブリの季節。今はまだ脂が十分に乗っていない。11月中旬を過ぎると、一番美味しい寒ブリの季節になる」と話した。

 冬になるとグルメたちの顔をほころばせるブリ。 この魚は口から尾びれの辺りまで黄色い縞模様があり、英語圏では「イエローテール」と呼ぶ。2‐4月の産卵期直前の冬が最も旬。この時期にとれるブリを「寒ブリ」と呼ぶ。

 ブリは大きいほど美味しい。松本さんは「12キロだったら大きい方。15キロを超えるものもある」と話す。日本でも高級魚とされ、大きさによって呼び名が違う。「20センチ以下のものはワカシ、20‐40センチのものはイナダ、40‐60センチのものはワラサ、そして全長90センチ重さ10キロ以上のものをブリと呼びます。東京・銀座の有名すし店ではほとんどが富山県氷見のブリを使います。雪がたくさん降る寒い地方のため、脂が乗っていて弾力が違います」

 松本さんが選んだブリはこの日午前10時ごろ、ホテルに到着した。松本さんは尾から頭に向かってウロコをはがし始めた。ウロコだけを取り除き、ウロコの下の皮は残しておく。松本さんの同僚の調理師イ・ジヌクさんは、「皮は料理を出すときにはがした方が鮮度を保つことができます」と説明する。

 ブリをさばいてみると、背中と尾は赤黒く、腹に近くなるほどピンクやアイボリーに近い色になる。「部位ごとに味が違います。腹の方は脂が乗っていて柔らかく美味しい。この部分は砂にこすれて美味しさが増すとして“すなずり”と呼ばれています。背中の方は活動量が少ないため、腹の部分より味がやや落ちます。赤黒い部分は血合いといいます」

 こう話しながら松本さんが腹と背から少しずつ身を切り取り、すしを握ってくれた。ブリを取り、ワサビをつけて酢飯を握る一連の動作は踊るように滑らかで無駄がない。

 透明な白に近い腹の肉にはたっぷり脂が乗っている。脂は太陽の光に当たっただけで溶け出しそうだ。口の中に入ると柔らかく溶けてご飯と交ざり、ブリの脂が口の中に広がる。身は旨みを超え、甘みさえ感じる。背中の部分はマグロのような味わいがあり、腹よりもさっぱりしている。

 最近は養殖物のブリも多い。イ・ジヌクさんは「養殖物は10キロ以上のものがなかなかありません。天然は腹の白い部分と背中の赤い部分の差がはっきりしていて鮮明です。養殖物は色の差がはっきりしておらず、全体的に赤みを帯びています。養殖はいつも同じ餌を食べていることから、餌にしている魚の味や香りが移ってしまいます。

天然物はいろいろな魚を食べているため、味や香りが優れているのです」

キム・ソンユン記者
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