ソウルでテナガダコを食べるならココ(上)


 「これが“中ナク”です。大き過ぎもせず、小さ過ぎもしないテナガダコ(韓国名ナクチ)。テナガダコは3‐4月が1番大きいけれど、味は今の時期のものが美味しい。中ナクを使ったヨンポタン(タコのスープ)は最高です」。ソウル汝矣島にある全羅道の郷土料理店「テバンゴル」のオーナー、パク・チョンアさん(53)はこの日の午前中に全羅南道務安郡から高速バスで運ばれてきたという「ポルナクチ(干潟で捕れたテナガダコ)」をつかんで見せた。足の長さは30センチ程度。中間程度の大きさのテナガダコということで「中ナク」と呼ばれている。

 テナガダコは5‐6月が産卵期だ。卵を産んで弱ったテナガダコは味も栄養も落ちる。その後、徐々に体力を回復し、10月ごろになると美味しく太ってくる。また同じ時期、5‐6月に孵化した幼いテナガダコもかなり大きくなっているが、グルメたちが狙うのがまさにこれだ。

 パクさんは「韓国産のテナガダコ、中でも務安郡のものだけがこの色をしている」と話す。パク社長は厨房から大きなアルミニウムの皿を持ってきて「おかずとして出すタコ炒めに使う中国産のテナガダコ」だと説明した。

 中国産は足の太さや体つきが務安産の2倍近く大きい。務安産のテナガダコは砂浜の色に似た灰色をしているが、中国産は赤みがかっている。最も大きな差は生命力だ。務安郡で獲れたものは休みなく動いているが、中国産は長旅で疲れているのか動きが鈍い。

 パクさんは「味もまったく違う」と説明しながら、務安産と中国産のテナガダコを小さく切ってごま油をかけて出してくれた。皿にぴったり張り付いた務安のポルナクチは、皿からはがすだけで一苦労だった。「秋のテナガダコは鉄の箸も曲がる」という話もまんざらウソではなさそうだ。

 皿に張り付いてはがれようとしなかった務安産のポルナクチは、口に入った瞬間、様子がまったく違ってくる。柔らかく、噛めば噛むほど味が出る。中国産は務安産と比べると硬くて味がうすく、噛むと少し生臭い。しかしこのように二つ並べて比較しながら食べるから分かるのであって、そのまま食べたらどれだけの人がその差に気付くだろうか。「ソウルで売っているテナガダコの98%は中国産だ」とパクさんは話す。

 テナガダコの食べ方はたくさんある。ほとんどは辛く味付けして炒めるが、高い韓国産のテナガダコを味わうためには、できるだけ薬味を少なく薄味にした方がいい。細足のテナガダコは生食が基本。しかし味が分かる人は「セバルナクチは柔らかいけれど味はうすい」とし、中ナク以上のものを好むという。旬の時期にはヨンポタンが最高だ。貝、昆布、煮干し、かつお節など、出汁を取る材料はそれぞれ違うが、さっぱりしたスープを作るという点はどこも同じだ。

キム・ソンユン記者
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