秋にぴったりの映画『その男の本198ページ』が23日公開された。アイドルグループS.E.S出身で女優に転身したユジンと、3作目の映画に挑戦する俳優イ・ドンウクがラブストーリーで共演。演技力が十分に検証されていない二人の組み合わせは、期待以上の結果をもたらした。ユジンのゆったりした発音と演技は、ユジンが歌手ではなく女優として成長しつつあることを感じさせた。イ・ドンウクも無難な演技を見せた。物足りなかったのは、全体的に静かな感情の動きばかりが続くため、二人の俳優としての爆発的なエネルギーを確認することができなかったこと。
同作品は図書館の司書ウンス(ユジン)と、昔の恋人の行方を追って、図書館の本の198ページだけを破り取るジュノ(イ・ドンウク)の恋物語だ。本が媒介となって結ばれる二人の恋物語は秋によく似合う。ミステリー的な要素を交え、お互いを少しずつ確認していく過程は、超スピード恋愛の時代には珍しいほどアナログ的で、見ている人をホッとさせる。
しかしアナログ的な感性が強すぎて、映画全体が過去に戻ってしまった印象を与える。21世紀スタイルの軽い恋ではなく、静かに広がるコーヒーの香りのような本当の恋を描いているが、1990年代前半の感性が現在も有効なのかは疑問だ。
ユ・ジテ、キム・ハヌル主演の映画『同感』を覚えている30代以上の観客に好まれる可能性はあるが、アナログとデジタル時代を歩んできた30代の高い美的感覚を満足させるには役不足のようにみえる。特に、日常の中での心温まるシーン、感情の込もった風景などを上手に描く日本映画をベンチマーキング(優良な実例に倣って目標設定すること)したようだが、日本の作品より劣る画面構成や映像美は、むしろ映画の足かせになっている。
さらに、今や意思疎通の道具である携帯電話が二人の間ではカメラとして一瞬だけ使用されており、ストーリーを無理やりこじつけようとしている印象がぬぐえない。また、映画を見ている間中、「どうして携帯電話を使わないのか」という疑問がわき上がり、映画に集中できないほどだった。