インタビュー:イ・ジアが語る「自分との戦い」


 「失敗したらいけないという強迫観念が生まれるようです。私はまだ新人なのに、周囲からはそう見てもらえないんですよ」

 そう語るのは、昨年末に放送された『太王四神記』でデビューし、現在水木ドラマ『ベートーベン・ウィルス』(共にMBC)に出演中のイ・ジア。彼女は幸せ者だ。まだ2本目のドラマ出演だというのに全てヒロインを務め、視聴率でも満足できる数字を残している。

 女優としては26歳という遅咲きのデビューだったが、イ・ジアは人々の羨望を集めるぐらい順調な歩みを続けている。“視聴率保証小切手”と呼ばれるのもうなずけるほどだ。しかし、実際にはそれが負担になったようだった。まだ学ばなければならないものが多い時期なのに、周囲の期待値は普通の新人に求める以上に高くなったからだ。

 それでも、そんな周囲の状況が、イ・ジアを一歩でも早く頂上に近づけるきっかけにしたのは確かなようだった。余裕の代わりに、自らにむちを打つことを選択したからだ。

■2本目のドラマ…自分との戦い


 約1年ぶりにドラマに戻ってきたイ・ジアは大きく成長していた。ファンタジー時代劇『太王四神記』では、時代的背景とキャラクターに加え、初めての演技という点まで重なったためか演技が無骨に感じたが、『ベートーベン・ウィルス』では表現力が一層洗練された。しかし、本人は満足していないように見えた。

 「自分に腹が立ちました。頭では分かっているのに、体が付いていかないからです。他の人は大丈夫だと言うけれど、私は満足できないので精神的、肉体的に大変です。家に帰って横になっても、眠れないときがあります」

 「まだ自分の演技をモニターでチェックするときは、照れくさいので布団をかぶって見る」と新人らしい一面を見せながらも、あふれる欲を持っているイ・ジア。“欲深い”と言われてもおかしくないぐらいの根性を見せていた。

 実際に『太王四神記』と『ベートーベン・ウィルス』では多くの状況が変わった。ジャンルの違いはもちろん、放送の1年以上前から撮影を開始した『太王四神記』に比べて、『ベートーベン・ウィルス』は撮影を始めて約3カ月が過ぎたところ。それだけに余裕はなくなったが、カット数は多くなった。

 加えて『ベートーベン・ウィルス』はクラシック音楽を素材にしたドラマ。イ・ジアはバイオリニストのトゥルミ役を演じるだけに、毎回台本が出来上がるたびに、演奏の練習もしなければならない。演技やら練習やらで目が回るほど忙しいスケジュールをこなしていたら、3日徹夜したということもあった。演技に手一杯なのに、このようなシステムのため序盤はすごく迷ったとイ・ジアは語った。

 そのうえトゥルミは難しい役どころだ。このドラマを演出するイ・ジェギュ監督は『太王四神記』を見て、イ・ジアならトゥルミの複雑な感情演技を上手くこなせると判断し、キャスティングをしたが、彼女は『ベートーベン・ウィルス』のシノプシスを見て、監督に「自信がない」と打ち明けたそうだ。

 しかし、明らかなことは『ベートーベン・ウィルス』に出演し、演技が一段階上がったということだ。当の本人は「不足な点だらけ」と不満を吐露したが、さきほど自らも言ったように、今回が2本目のドラマとなる新人女優。イ・ジアはこのように自らを励まし、女優として自分を完成させていく途中にいる。

■イ・ジアvsトゥルミ


 『ベートーベン・ウィルス』でイ・ジアが演じているトゥルミは、実際イ・ジアと似ている点が多いキャラクターだ。

 劇中トゥルミは聴覚を失うこともあるメニエール病の診断を受け、音楽をやめた後、公務員として暮らしていた。しかし、自分が出したプロジェクトのオーケストラ企画案が採用され、再び音楽への夢を追い求める人物。熱しやすく冷めやすい性格で義理があり、全ての事に正直で淡白で、楽天的だ。

 イ・ジアは「ストレスが溜まればたくさん食べて発散し、大変なことに出くわしたときは淡々としている面や、熱しやすく冷めやすいが、明るくていたずらもするなど、多くの点が私と似ている」と述べた。

 時々、自分を冷たいと思う人がいるが、実際はそうではないと言うイ・ジア。インタビュー中にも、言葉尻をとらえて冗談を言いながら大笑いする姿に、イ・ジアの本当の性格がそのまま現れていた。

 しかし、イ・ジアはトゥルミに対して絶対理解できない面もあると言う。

 「会ってから何日も経たない男と、どうして手を握れるんですか? 私は男性と付き合うときは、時間をかけて様子を見るタイプですが、トゥルミはその辺がとても開放的なので、なじめないときがあります」

キム・ウング記者

写真=ハン・デウク記者

<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c)Chosunonline.com>
関連ニュース