故チェ・ジンシルさんの足跡をたどる旅(中)

◆一瞬の幸福「バラ色の人生」

 カプサンを下りてから車で加平方面に向かいます。おしゃれなカフェや美味しそうな食堂が並ぶにぎやかな通りはあえて避け、カフェがほとんどなくなるところまで車を走らせると新清平大橋が見えてきます。左折して橋を渡った後、ソウルの方向に右折し、川沿いに下ることにしました。そこにチェ・ジンシルさんが出演したドラマ『バラ色の人生』の最終回を撮影したロケ地があるからです。覚えていますか。家族で行った最後のピクニックのシーン。子どもたちに手を引かれススキ林を歩き、ビニールシートを敷いて暖かな日差しを満喫した、弱りきったメンスンの姿。あのシーンをこの橋の下で撮影したのです。韓国の中年女性の底力と悲しみを見せてくれたこのドラマ。だからこそ最後のピクニックがあれほど悲しかったのだと思います。



◆ドラマ『バラ色の人生』で主人公メンスン一家が最後に行ったピクニックの道

 道を探すのは簡単ではありませんでした。ソウル方面に戻ってから再び江原道の方へ向かう複雑な道だからです。水上レジャー、釣り、ボート乗り場などの看板が見える川沿いへと向かいます。橋が左側に見えたら、その方向に間違いありません。広い砂利道があり、その後ろには大きな橋、ススキ林が見えます。車は砂利道の入り口に止めておきます。この先は車では通りにくい道が続くからです。

 砂利道を歩いて橋の下を通り過ぎ、ススキ林に入ります。ドラマは北漢江とススキ林がぶつかる地点で撮影されました。メンスンが夫のひざに頭を乗せ横になったのは、ススキ林の北側にある広いトンネルです。ススキ林には迷路のような散策路が作られています。わたしはススキ林の真ん中でしばらくの間たたずんでいました。こんなに殺伐としたところであんなに感動的なシーンが誕生したのかという驚きと、現実の世界でチェ・ジンシルさんが経験したたくさんの出来事がドラマの中でも同じように繰り広げられたのだと思ったからです。彼女にまた会いたくなりました。

◆京江駅、彼女は逝ってしまったけれど…


 川に沿って春川方面に行くと、映画『手紙』のロケ地があります。胸が締め付けられるような思いがします。大学院の講師だったジョンイン(チェ・ジンシル)と植物学者のファンユ(パク・シニャン)はある田舎の駅で偶然会い、愛し合うようになります。二人は小さな樹木園で愛し合い、その樹木園で結婚式を挙げます。この田舎の駅が「京江駅」で、植物園の名前は「朝の静かな樹木園」です。

 京江駅で会った二人は、植物園にある「ファンユの木」と名付けられた松の木の下で結婚式を挙げます。そんな幸せの真っ只中でファンユを襲った不治の病、そして死…。雨がしとしと降る日、ファンユの灰を木の周りにまいたジョンインは、京江駅の駅員からあるビデオテープを手渡されます。頭に包帯を巻いた夫ファンユがジョンインに向かって語りかけるテープでした。

 「僕たちの記憶が残っている間は、お別れじゃないと思うことにしよう。そしていつか…いつか、ずっとずっと後で…後で時間がたったら…また会おう。必ずまた会おう」

 ジョンインは泣きました。そして後に子どもの手を引きこの樹木園を訪れ、その子に父親のことを語って聞かせるのです。この映画はそんな風に終わります。

パク・ジョンイン記者
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